大震災に対する空の役割と課題
鈴木真二教授(航空宇宙工学専攻)
航空イノベーション総括寄付講座代表
航空イノベーション研究会代表
1. 地震発生直後の動き
- 3月11日
- 14時46分18秒 地震発生
- 14時50分 防衛省災害対策本部設置
- 14時52分 岩手県知事の要請
- 14時57分 海自大湊地方隊の救難ヘリUH-60J離陸
- 15時01分 映像伝送装置を搭載した陸自東北方面航空隊のUH-1(ヘリ映伝)離陸
- 国土交通省東北地方整備局 防災ヘリが津波の映像
地震により被害を受けた空港へは着陸できない
ダイバートの必要性
福岡の航空交通流管理センターが空港の割り当てを行う
羽田、成田を目指した国際線約50機が対象
代替空港
- 関西空港、新千歳空港、横田空港、セントレア空港など
デルタ航空767
- 成田からセントレアを目指し、変更の指令を受け、横田を要求したが駐機場がなく、千歳へ燃料切れと格闘しながら着陸
参考:JALOPNIK "How I landed a 767 in Tokyo after Japan's deadly earthquake"
2. 被災者捜索と救助、人と物の輸送
自衛隊の出動
- 10万人を超す人員、ヘリコプター217機、固定翼機326機(3月27日時点)
民間ヘリの弾力的運用
- ヘリコプターからの物件投下に必要な届け出を電話で受けつける
- 耐空証明、乗務員の航空身体検査証明の更新に関する手続きの弾力化
米軍の協力
3. 衛星写真・航空写真
衛星写真
- JAXA 3月13日より陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)により衛星写真を取得(ALOSは5月12日に運用終了)
- DigitalGlobe社の衛星写真
- 情報収集衛星(一般には未公開)
航空写真(無人機)
米軍無人機
- Global Hark
- T-Hawk
日本国政府による要請により空撮実施
(取得データは未公開)
東京電力による要請
国産無人機
- フジ・インバック(株)製小型無人機による福島原発空撮エアフォートサービス
航空写真
- 国土地理院
小型電動無人機
東大、早稲田、アイコムネット(2011.6.3)
4. 衛星通信
JAXAにより技術試験衛星Ⅷ型「きく8号」による通信回線の提供
- 3月24日から岩手県大船渡市役所
- 4月4日に現地対策本部兼避難所となっている岩手県大槌町中央公民館になされた
JAXAにより超高速インターネット衛星「きずな」による震災対策支援
- 3月15日から気仙沼市消防本部と東京消防庁 (NICT)
- 3月30日から岩手県庁 - 釜石市 - 筑波宇宙センター (JAXA)
5. 航空臨時便
臨時便
- 花巻、山形、福島、茨城各空港
- 3月24日では42便
仙台空港再開
- 4月13日
- 自家発電
- 非常用管制機器
6. 非常用管制塔及び非常用レーダー設備
7. 航空の役割と課題
地上輸送路が絶たれた場合の輸送手段
- 地方空港の役割強化
上空からの観測
- 衛星との連携強化
- 状況認識
- 被災者捜索
ヘリコプター、飛行艇
- 被災者救出、物資投下、消化活動
無人航空機の緊急整備
- 緊急空撮
- 原発空撮
- 空中通信基地局化(長時間滞空)による通信手段提供
被災地での航空管制体制強化
防災、民間ヘリコプターの高度化
- 有視界飛行 (夜間、悪天候の制約)
- 自衛隊の移動式レーダー、アナログ通信
将来像
- GPSによる航法
- ディジタル回線
- 無人機の飛行
- 次世代の航空管制システムへの期待
SESAR (欧州)、NextGEN (米国)、CARATS (日本)