サマーダボス 2014に参加して
2014/9/16
9月10日〜12日まで、中国天津市で開催された通称「サマーダボス会議(正式にはAnnual Meeting of the New Champions 2014)」に、初めて招待され参加しました。
この会議には、世界各国から、政治家、国際機関の幹部、企業家、投資家、NGOの活動家、科学者など約1800名が参加し、イノベーションを通じた、サステナビリティ、食料危機、高齢化、都市の再設計、災害への備え、通貨危機等の国際的な社会課題の解決について、濃密な討議が行なわれました。特に、New Championsとして、社会企業家や社会課題の解決につながる技術開発で成果を挙げている科学者が目立ちました。また、科学技術によるイノベーションの可能性に対して、高い敬意が払われていると感じました。
多くのセッションが、参加型となっているのがこの会議の特色です。スピーカーによる講演の後、参加者がグループに分かれて、テーマ別に議論をし、最後にその討議の結果を持ち寄って集約をするという構成になっています。知のインタラクションを重視した仕掛けといえます。また、討議に参加したメンバーにとっては、その後の関係づくりのよいきっかけとなります。普段の我々の会議や学会では、スピーチに対する短い質疑やパネル討論の範囲にとどまっている場合が大半ですので、今後、こうした形を取り入れてはどうかと考えます。
会議には様々な形式のセッションがありますが、我々、東京大学のチーム4名が招待講演を行ったのは、IdeasLabという形式のセッションです。4名が5分ずつ、ペチャクチャスタイル(注:20秒×15枚のスライド、スライドは原則としてイメージや写真のみ)で講演をし、その後、講演した4人が議論のリーダーとなる形で参加者が4つのグループに分かれ、具体的なテーマ別に議論を行います。IdeasLabは、世界のトップクラスの大学や研究機関のチームを招く形となっており、今回は、アメリカからはスタンフォード大学、カーネーギメロン大学、欧州からは、オックスフォード大学、ETHなど、アジアからは、我々東京大学の他、清華大学、香港科学技術大学、シンガポール国立大学、韓国科学技術院(KAIST)が招かれていました。
我々のセッションの構成は、下記のようなものです。
タイトル:
技術的なブレークスルーは、エネルギーの生産、供給、消費をどのように変えうるか?
- 全体紹介: 江川理事
- Idea 1: Distributed and Off-Grid Energy Solutions (工学系研究科 坂田一郎教授)
- Idea 2: Next-Generation Energy Conservation(工学系研究科 藤井康正教授)
- Idea 3: The Future of Energy Storage(DG総括寄付講座 田中謙司特任准教授)
- Idea 4: From Smart to Digital Grids(DG総括寄付講座 阿部力也特任教授)
幸い、会場は満席となり、充実した議論を行うことが出来ました。今回の議論を通じて、電力と情報分野の融合が引き起こす新たな社会(例えば、発展途上国においても広く電化のメリットが享受出来る社会)の可能性、具体的な技術としてのデジタルグリッドが持つ可能性について、関心を得ることが出来たと思います。議論の際には、まず、興味を持っていただいた参加者から、より具体的な点について多数の質問を浴びる形となり、その後、その展開の可能性についての質疑となりました。私の方からは(Idea 1)、新たなコンセプトによる電力供給拡大による社会課題(貧困、社会の分断、サステナビリティへの懸念等)の解決の可能性について提案を行い、また、それに向けた障害としての新技術の社会的受容の難しさ、社会システム改革の遅れ、政府の計画立案能力や投資環境の未整備、新ビジネスモデル考案の難しさの4つを挙げた上で、その障害を乗り越えるための具体的な活動として、①法制度立案への助言、人材開発、マイクログリッド構築の設計支援等、ミャンマーにおける地方電化への貢献(政策ビジョン研究センター/国際エネルギー分析と政策研究ユニットと国際機関ERIAとの協力事業)、②ケニアにおける独立型の電力供給システム(デジタルグリッド技術を用いた「ソラーキヨスク」)の展開(デジタルグリッド総括寄付講座)の2つの事例の紹介を行いました。
参加者からは、特に、電力と情報技術の融合、ボトムアップ型の制御による、発展途上国における「無電化地帯(Off-Grid)」や弱電化地帯(Weak Grid:電力網が弱く、停電が頻繁に起こるような地域)における効率的で市民の手に届く電力供給の可能性について強い関心を集め、インド、ミャンマー、バングラディシュ、ラオス、パプアニューギニア等からの参加者と具体的な対話を行いました。
私個人としては、今回、Leaders from Scientific Community (うちScience and Technology Faculty)の一人にリストされたことを誇りに思います。
今後、この機会に得られたアイデアや人的な関係を大事に活用しつつ、新技術の展開による貢献活動を進めていきたいと考えています。最後に、今回、参加の機会を与えていただいた方々に深く感謝を致します。
サマーダボス会議の当日の映像が YouTube に公開されました。
Annual Meeting of the New Champions 2014 and the IdeasLab
(live on the World Economic Forum’s YouTube page)