カンボジアThe 3rd East Asia Summit Energy Efficiency Conference参加報告

チュラロンコン大学エネルギー研究所 客員研究員
山口 健介

2015/2/26

Read in English

Photo by ERIA

2015年1月16日プノンペンにて、”The 3rd East Asia Summit Energy Efficiency Conference (EEC)”がASEAN Center for Energy (ACE)及び経済産業省の後援を受けて、Economic Research Institute for ASEAN and East Asia (ERIA) 及び Ministry of Mines and Energy, Cambodia (MME) の共催で開催された。近年のカンボジアにおける、輸出志向の軽工業の盛況、オフショアにおけるエネルギー資源開発の動きは、どれもエネルギーを土台とした経済の躍動を示唆する。そこで、MMEは”Fueling Development of Cambodia and Energy Efficiency”と題して、EECをERIAと共催することとした。まず、Victor Jona局長(General Department of Energy, MME)、Sanjayan Velautham事務局長(ACE)、竹広克室長(経済産業省資源エネルギー庁国際エネルギー戦略推進室)から開会の挨拶があった。

政策ビジョン研究センター(PARI)は、従来よりERIAとともにASEANのエネルギー政策研究を実施してきており、成果をこのEECにおいてASEAN各国等と共有してきた経緯がある。今回もERIAの求めに応じて芳川恒志特任教授から「ミャンマーの地方における電力アクセスの改善に関する研究」について、これまでの成果と今後の研究・活動方針等について紹介し、議論を行なった。この中では、研究に当たっては信頼できるデータや統計が限られる中、フィールドワーク、比較研究、シミュレーションの手法等を活用していること、この中で2030年までの必要オフグリッド電源の容量が400MW強で、そのための必要資金が70億ドル強と試算していること、PARIの活動が研究にとどまらず人材育成や関係省庁との協力なども含む幅広いものとなっていることなどを紹介した。電化率の向上、特に地方電化は、カンボジアをはじめとしていくつかのASEAN諸国においてもエネルギー政策上の主要課題であり、午前のセッションにおいてカンボジアに関する議論が行なわれた。今回紹介したPARIの研究や活動は、これまでミャンマーの関する情報が非常に乏しかったこともあり大きな関心を呼び、活発な議論が行なわれたところである。

以下、各セッションについてやや詳しく紹介する。

【セッション1】
”Fueling Development of Cambodia”ではVictor局長を座長として、ASEANにおけるコネクティビティ促進によりカンボジアがうける便益について議論された。まず、Dionisius Narjoko博士(ERIA)により、AEC設立が域内貿易および投資に与える影響について研究成果の紹介があった。RCEP(東アジア地域包括的経済連携)交渉が重要となってくることが指摘された。次に、Hay Sovuthea氏(Supreme National Economic Council, Cambodia)より、南部経済回廊を中心として、カンボジアの産業を今後10年でどのように育成するかの計画について発表がなされた。さらに、Ministry of Public Works and Transport, Cambodiaより、コネクティビティにおけるハードインフラの計画が発表された。

【セッション2 】
”Energy Supply Perspective”では、Khamso Kouphokam副局長(Department of Energy Policy and Planning, Ministry of Energy and Mines, Lao PDR)を座長として、カンボジアにおける一次エネルギー・および二次エネルギー供給の概況について議論された。まず、Cheap Sour局長(General Department of Petroleum, MME)より、今後のオフショアのエネルギー資源開発について発表があった。さらに、Chan Sodavach副局長(General Department of Electricity, MME)より、今後の電力マスタープランについても発表があった。今後、電化率については50%(2020)、70%(2030)を目標としており、2021年までは年率10%(それ以降は8%/年)の需要増が想定されている。それに基づき、供給設備の増設を計画しているが、タイ、ベトナム、ラオスからの輸入を増やしていく予定である。

【セッション3】
”ERIA EE & RE Studies” では、Sanjayan事務局長を座長として、ERIAエネルギープログラムにおける研究成果が発表された。まず、木村アドバイザー(ERIA)によって、積極的な省エネ策を取った時のカンボジアにおける2035年のエネルギー節約ポテンシャルが示された。それによると、最終総エネルギー使用量は8%も節約できる。次に、クリーンコール技術について、Han Phoumin博士(ERIA)から紹介があった。初期投資の大きさを考えると、政府補助が欠かせないことが指摘された。さらに、Yanfei Li博士(ERIA)は、都市部の交通部門における公共交通の充実に依るエネルギー節約に関する研究を紹介した。

【セッション4】
「省エネ及び低炭素エネルギー」では、Han博士を座長として、各機関で実施中のエネルギー研究について紹介があった。まず、Amaraporn Achavangkool氏(Department of Alternative Energy Development and Efficiency, Ministry of Energy, Thailand)は、2035年を目指してASEAN各国で取り組んでいる省エネ・節エネの取り組みを紹介した。現在、各国ごとの取り組みに加えて、ASEAN地域全体としての取り組みも行われている。次に、Toch Sovanna部長(New and Renewable Energy Department, General Department of Electricity, MME)は、カンボジアにおける新エネルギーを用いたオフグリッド農村電化の取り組みについて紹介した。さらに、Wongkot Wongsapai助教授(チェンマイ大学)は、エネルギー省の委託で進めている工場等におけるエネルギー・マネージメント・システムについて紹介した。先述のとおり芳川恒志特任教授からERIAとの共同研究について紹介したところである。

【セッション5】
”Balancing Economic Growth and Energy”では、木村アドバイザーを座長として、各国エネルギー行政官によってパネルディスカッションが行われた。カンボジア、インドネシア、シンガポール、タイの各行政官が各国における今後のエネルギー政策のポイントについて発表した。例えば、Arief Heru Kuncoro氏(Directorate of Energy Conservation, Ministry of Energy and Mineral Resource, Indonesia)によれば、インドネシアでは、現在10%の新エネを2025年には20%強に増加させる予定で地熱発電への期待が強い。また、Latha Ganesh課長補佐(Energy Policy and Development, Energy Market Authority, Singapore)によれば、シンガポールでは、様々なインセンティブスキームやマーケットへの情報提供を通じて更なる省エネを進める予定である。

関連リンク