活動報告:球陽高校受け入れ
高等学校2年生の「総合的な学習の時間」に協力
来訪した高校生グループの研究テーマである「デバイスラグ問題」について
質疑応答を受け、研究の成果を踏まえて交流
2011年11月16日、東京大学政策ビジョン研究センターは、沖縄県立球陽高等学校2年生グループの訪問を受け、高校生グループの研究テーマである「デバイスラグ問題」について質疑応答を受けました。
沖縄県立球陽高等学校は、1989年に開校された沖縄市南桃原にある県立高等学校で、「球陽プロジェクト」などで有名です。「球陽プロジェクト」とは、球陽高等学校で実施されている「総合的な学習の時間」のことです。「進路・職業観の育成」をテーマに2年生が自ら企画、実施、 報告に取り組むプロジェクトのことをいいます。その目的は、次の3つとされています。(1)基礎学力を身につけさせ、現代社会における諸問題への関心を持たせると共に、課題解決能力を養わせる。(2)従来の学部・学科研究に留まらず、有機的に繋がる社会構造に気づかせながら、社会と職業や学問との接点を調査・検討・実感させることで、各自の進路への興味を喚起させる。(3)生徒各自に自分の生き方、あり方を考える機会を与え、自分の力で将来設計ができる能力を養わせるとともに、社会で活躍、貢献できる人材の育成を図る。
今回、政策ビジョン研究センターでは、高校生グループの研究テーマが「デバイスラグ問題」であることから、林良造教授(医療機器の開発に関する政策研究ユニット責任者)を代理して、佐藤智晶特任助教が質疑応答を受けました。質疑応答では、高校生グループの事前調査を踏まえて、デバイスラグ問題についてより深い分析が紹介されました。
デバイスラグは、日本国内の患者と諸外国の患者との間でアクセスできる医療機器・材料に格差があることを示す言葉です。より一般的には、ある医療機器が外国で審査・承認されてから日本で承認されるまでの期間のことをいいます。現在は、審査・承認にかかる時間の差だけでなく、海外で承認申請されてから我が国で申請されるまでの時間(いわゆる申請ラグ)にも注目が集まっています。佐藤特任助教は、医療イノベーションの推進という観点から、デバイスラグの解消のための取り組みと将来の展望について、政策ビジョン研究センターの研究成果を交えて説明しました。
高校生グループには、質疑応答の後に東京大学の広報センターで大学の概要を知っていただき、簡単な科学実験にも触れてもらいました。広報センターは、東京大学のことを知っていただくための施設です。学内外を問わず誰でも利用できる、本学では初めての広報関係施設として、1995年9月21日にオープンしました。今回は、広報センターの細谷さんのご協力を得て、わずかな時間にもかかわらず高校生グループに東京大学の歴史などを知っていただきました。
次世代を担う高校生グループと研究成果に基づいて交流することは、東京大学政策ビジョン研究センターにとって初めての試みでしたが、東京大学が有する知的リソースを統合し、政策研究を行い、その成果を社会に発信していくことを使命とする機関として、極めて有意義な機会でした。研究成果を政策に関心をもつ一般の方々が理解でき、現実の社会の改善に結びつくような形に加工し、発信することが当センターのミッションだからです。今後も、このような機会を通じて、研究成果を社会に向けて積極的に発信して参ります。