活動報告:ケンブリッジ大学・政策と科学センターからの訪問
2012年12月17日、ケンブリッジ大学・政策と科学センターのエクゼクティブディレクターであるRobert Doubleday博士を当センターにお迎えし、ディスカッションを行いました。
はじめに城山センター長から当センターの設立の趣旨や大学の中での位置づけ、現在力を入れて取り組んでいる研究プロジェクト等の説明がありました。
Doubleday博士が現在マネジメントされている政策フェローシッププログラムは、年間35人の公務員を選抜し、その問題意識に即してアレンジされた十数人のケンブリッジ大学の専門家と5日間かけて面談を行うというものです。大学における実証研究と政策をどのように結び付けていくのがいいか模索する中で生まれたこのプログラムは、実務家である公務員(政策担当者)に大学としてシステマティックに専門家を紹介し、公務員の問題意識やそれに基づいた研究結果を大学にフィードバックするとともに、公務員とのネットワークを構築するという興味深い試みであり、大学のアウトリーチ戦略としても大変参考になる内容でした。
このプログラムの発端となったのは、ケンブリッジ大学が政府向けに行うハイレベルセミナーです。シニアクラスの国家公務員が同大学の優秀な科学者から最先端の科学技術について学ぶこのセミナーは、これまで2年間にわたり週1回開催されており、科学者と政策担当者との相互交流に役立っています。現在イギリスの公的資金は削減傾向にあり、イギリス政府は大学に対し、公的資金での研究が経済的貢献や事業創出などの点でより社会に貢献していることを論証する努力を促す方針を取っています。そのため、政府の方針に対し大学からアドバイスを続けていく必要性があり、また、ケンブリッジ大学がビジネスセクターも含めてこれまでに築いてきたネットワークが功を奏して、政策と科学センターの発足および政策フェローシッププログラムの実施につながりました。
政策と科学センターは比較的小規模な組織で、5-6名の非アカデミックスタッフによって運営されていますが、同センターが主催する政策フェローシッププログラムは、ケンブリッジ大学の500のアカデミックネットワークに支えられており、連携体制が組まれています。特定業務に馴染んでいる国家公務員が、哲学や工学、医学、物理学、地理学など異なる分野の研究者の観点に触れる事は、非常に生産的であり、参加者は戸惑いを感じながらも大変楽しんでいるようです。逆に科学者にとっては、国家公務員の優秀さに触れる機会でもあり、相互理解を可能にし、アドバイスし合えるインターコネクションの形成につながっています。
今回のディスカッションでは、科学者や科学政策は国境に縛られていないことから、科学政策に有効な示唆を得るために、国際的ネットワーク構築が必要との話があり、小規模の国際的パートナーシップを結ぶ意義と可能性についても述べられました。