活動報告 OECDイノベーション戦略に関する専門家会合
2010.2.10
OECD Innovation Strategy Expert Advisory Group (EAG)
2010年2月28日〜29日、OECD本部のシャトーにて行われた標記会合に日本代表して参加しました。同グループは5月末の閣僚理事会に報告予定の「イノベーション戦略」について、専門的なアドバイスを行うために組織されたものであり、今回、26カ国・地域から代表が集まりました。
策定中の「イノベーション戦略」は、経済成長と世界的な課題解決の同時達成を目指すものです。片側の経済成長については、金融危機後の世界において新たな持続的成長の源泉を創出ることを目的としています。もう一方の世界的な課題とは、「気候変動」、「健康・高齢社会」、「食の安全」が典型として挙げられています。これらは、政策ビジョン研究センターの問題意識とも共通するものです。また、世界的な失業率上昇のなかで雇用の創出も重要な課題と認識されています。これは特に、環境問題対応のイノベーションを意識して「グリーン・ジョブ」と言われています。
今回の戦略の策定過程では、「イノベーション」を技術開発にとどまらず幅広く捉え、教育、組織改革、ビジネス環境の整備、規制改革、技術の移転、知識ネットワークの構築など、多様な視点での提言を試みています。特に、強調されているのは、公共サービスセクターにおけるイノベーションの創出(イノベーションの文化の形成、ユーザー主導のイノベーションの創出、官民連携PPPの活用等)、サービスと製造産業分野の違い、又はサービス分野内における知識集約度の違い踏まえた政策展開、世界的課題への対応を原動力とすること、政策の統合・調整の重要性等です。戦略だけでなく、現場での政策展開の指針となるハンドブック等も作られる予定です。
私からは、日本の新戦略や我々のシルバーニューディールの考え方について紹介するとともに、学術的な分析も踏まえ下記のような6項目提言を行いました(パワーポイント資料を参考、論文欄に関連論文を掲載)。前半の分析については、特に、サステナビリチィに関する学術的知見を俯瞰したネットワーク分析図や燃料電池やサービスイノベーション(SSME)分野における世界の研究能力と国際的な提携関係について分析した図は、関心を集め様々な質問を受けました。
- 急速に変化し成長する研究開発の成果を迅速に捉える仕組みを構築すること
- 知識の構造化や統合を効果的に行う人的な能力を育成すること
- 技術と制度(規制、標準、ガイドライン等)との対話を進めること
- 国や地域クラスターをつないだ水平的な研究協力を進めること (特に、アジアにおいて、発想を「先進国より技術移転」から「水平的な研究協力」へと転換すること)
- イノベーションの基盤として最も重要な特許制度について日本がリーダーシップをとって構築した特許審査ハイウエイ(PPH) の更なる拡大を図ること
- サイエンスリンケージの上昇を見据えた制度改革や産学連携の環境整備を急ぐこと (特に、グリーンイノベーションやシルバーニューディールの領域において)
また、その他、専門的な見地から、サービスイノベーションを捉える指標 (SSMEを検索語として論文や特許の分析)等について助言を行いました。