第1回 日独高齢化社会国際会議

パンフレット

1st Japan-Germany International Workshop on Aging Society

東京大学(政策ビジョン研究センター)とドイツ科学技術アカデミー(acatech)は、10月5日、第1回の日独高齢化社会国際会議(1st Japan-Germany International Workshop on Aging Society)を、京都において開催しました。双方から、老年医学、心理学、数学・情報学、物理学、法学、政治学、イノベーション学、サステナビリティ学、多様な産業技術など、多彩な分野の研究者が集まり、新たな社会モデルの構築に向けた領域横断的な議論を行いました。

高齢化という社会の変化には、「光」と「影」がありますが、従来、ネガティブな側面だけが強調されてきたきらいがあります。実際には、平均年齢だけでなく、健康年齢も伸びています。スピードの低下を知識で補完することが可能、運動機能への介入により認知機能の改善が可能等とのエビデンスもあります。フレームワークは変わってきています。これらを踏まえ、基本的な認識として、「社会の高齢化(aging)」を、「長寿化(more life)」と捉えるなど、高齢化について、社会の認識や考え方を変える必要がある(相対的に、ネガティブな思考からポジティブな思考へ)として意見が一致しました。

個別のイッシューとして特に、社会的イノベーションによるアクティブエイジング社会への移行、社会構造変革と経済成長の両立、e-healthのような新たな仕組み導入を含めた、サステナブルな社会保障制度に向けた改革、強力な市民後見体制の構築、働き方の見直し、高齢化に関する重要なエビデンスと認知機能等の改善を可能とする介入、ICTを利用した各種のサポート機能(テレケア、スマートホーム等)の提供、SmartSenior Allianceプロジェクト 、地域社会と高齢化等について、発表とそれらを踏まえた議論を行いました。

その結果、日独双方は、「社会の高齢化」又はそれに関する学問領域である「ジェロントロジー」は、多岐にわたる相互補完的な研究課題を多く含む領域であり、両国の研究協力の最も重要なテーマの一つであることを確認しました。

また、日独両国は、「社会の高齢化先進国」として同じバックグラウンドを有し、エビデンスに基づく次世代の社会モデル構築のために、双方のアカデミアが課題解決のために、協力して大きな貢献をしていく必要があるとの認識で一致しました。また、両国は協力しあいながら、それぞれ、アジア、欧州における研究ハブとなるべく活動していきます。

新たな社会モデルを構築するためには、高齢化に伴う身体、認知機能の変化や食と栄養の研究とエビデンスの発信、高齢化に対応するための新公的システムのデザイン(医療や介護)、民によるサポートの仕組みの整備(市民後見、社会ネットワーク、雇用やボランチィア等を通じた社会との接続)、高齢化社会を支える新技術(都市デザイン、交通、住宅、ICT利用の様々な機能、認知機能研究を踏まえた訓練をなど)など、エビデンスを大事にしながら、多様な学術知識を統合し、活用することが必要です。また、モデルの実装に当たっては、ローカル(地域的)なリーダシップに基づく先進的、統合的な活動が重要であり、アカデミアによるそれへの貢献も重要なポイントです。

日独両国は、今回のような領域横断的なワークショップが有意義であると評価し、今後の協力の重点トピックスを選定した上で、「第2回ワークショップ」を来年ドイツ(ベルリン)において開催することで合意しました。

第1回 日独高齢化社会国際会議

日時:平成22年10月5日(火)10:00〜15:00
場所:京都ホテルオークラ
共催:東京大学・ドイツ科学技術アカデミー(acatech)
後援:ドイツ大使館協力:産業競争力懇談会(COCN)

プログラム

10:00〜12:00 報告と討議
12:00〜13:30 懇談会(双方のメンバーで継続的な議論)
13:30〜15:00 討議と今後のプランについて

参加者

Dr. Georg Schutte, Secretary of State,
MinR Maximilian Metzger, Deputy Director General, German Ministry of Science and Education
Ursula Staudinger,
  Professor, Vice-President Leopoldina, German National Academy of Sciences
Henning Kagermann,
  Professor, President acatech, German Academy of Science and Engineering (Co-Chair)
Reinhard Huttl, Professor, President acatech, German Academy of Science and Engineering
Bernhard Muller, acatech members Professor
Otthein Herzog, acatech members Professor
Dr. Steinhagen-Thiessen, Professor, the Humboldt-University
Prof. Dr. Florian Coulmas, Director German Institute for Japanese Studies (observer)
Dr. Ulrich Glotzbach, Assistant to Professor Kagermann (observer)
Dr. Martina Robbecke, Assistant to Professor Huttl (observer)
Dr. Evelyn Obele, Counsellor, Science, Technology and
Environment, Embassy of the Federal Republic of Germany, Tokyo
小宮山 宏 三菱総合研究所理事長 東京大学総長顧問
森田 朗   東京大学政策ビジョン研究センター学術顧問/教授
坂田 一郎 東京大学政策ビジョン研究センター教授 (Co-Chair)
秋山 昌範 東京大学政策ビジョン研究センター教授
小野 太一 東京大学公共政策大学院教授
大西 丈二 名古屋大学総合保険体育科学センター 特任准教授
鈴木 敦命 名古屋大学環境学研究科講師
梶川 裕矢 東京大学イノベーション政策研究センター特任講師
宮内 康二 東京大学東京大学医学系研究科 特任助教
佐藤 智晶 東京大学政策ビジョン研究センター特任助教
森 雅之   JX日鉱日石エネルギー株式会社 研究開発企画部 マネージャー
山田 敬嗣 日本電気株式会社C&Cイノベーション研究所 所長
村瀬 亨  住友電気工業株式会社材料技術研究開発本部 情報通信研究開発本部 技師長
中塚 隆雄  COCN事務局長
丸山 貴広 豊田通商株式会社 プロジェクトマネージャー

スタッフ

小塩 篤史 東京大学政策ビジョン研究センター特任研究員
高岡 靖之 東京大学政策ビジョン研究センター特任研究員
荒見 玲子 東京大学政策ビジョン研究センター特任研究員
村上 壽枝 東京大学政策ビジョン研究センター特任専門職員
小林 範子 東京大学政策ビジョン研究センター助手(事務)