第28回 PARI政策研究会

 2011/6/10

環境未来都市および高齢化の観点から

平竹雅人氏(内閣官房国家戦略室 総理補佐政策企画調査官)
当日使用スライド

報告の概要

持続可能な経済社会の実現のために検討されている「環境未来都市」構想のコンセプト(中間取りまとめの概要)が説明された。「環境未来都市」構想は、2010年6月に閣議決定された新成長戦略に基づいて、特定の都市・地域において、未来に向けた技術、社会経済システム、サービス、ビジネスモデル、まちづくりで世界に類いのない成功事例を創出、それらを国内外に普及展開させるものである。環境未来都市は、環境・超高齢化社会に向けた、人間中心の新たな価値を創造する都市を基本コンセプトとしている。そして、環境未来都市は、「環境未来都市整備促進法」(仮称)という新しい法律に基づいて選定され、国だけでなく産官学・自治体のコンソーシアムによって都市創出に向けた取り組みが進められることになっているという。そこでは、国内外のベストプラクティスを融合させて、国際的な知のプラットフォームを活用し、人々の生活の向上が図られる予定である。

報告を受けてのディスカッション

人間中心の新たな価値を創造するうえで、医療・介護というインフラの重要性が指摘された。

環境未来都市のコンセプト作りの際に、どのようなサイズのどのような都市像を想定していたのかについて質疑応答があった超高齢化社会への対応というときに、どのような生き方をする高齢者を標準としてまちづくりをしてゆくのかという点について、議論が交わされた。高齢化社会には高齢者のみならず若者も生活しており、世代間格差を超えて人間らしく生きてゆけるまちづくりが求められているという議論があった。

システム輸出について

鶴田浩久氏(国土交通省 大臣官房人事課企画官)
当日使用スライド

報告の概要

システム輸出についてと題して、我が国の鉄道システムの海外展開の現状と課題について報告された。欧州鉄道産業連盟(UNIFE)によれば、鉄道産業の世界市場規模を年間14兆円超、今後2016年までに年率2〜2.5パーセント程度で成長すると予想されている。具体的にいえば、アメリカ、ブラジル、インド、英国、中国、アセアン諸国などは、二酸化炭素排出量の少ない効率的な輸送機関として鉄道に注目しており、国家プロジェクトとして鉄道整備を積極的に検討、推進している。そこでは、ハイレベルな国際協力が要請され、我が国の鉄道システムは、省エネルギー性、安全安定、高頻度、大量輸送等の面で大きな期待を寄せられている。

我が国では今後、官民連携による売り込み、関係省庁と連携した公的金融による支援、欧州主導で進む企画に対する対抗措置(我が国の鉄道技術・規格の国際標準化)、海外鉄道案件に対する日本からの積極的提案と発注コンサルティング能力の育成支援などの取り組みによって、海外展開が進められてゆく見込みである。

報告を受けてのディスカッション

我が国の新幹線の地震対策技術の素晴らしさや、正確な運行を支えるシステムなどの強みが指摘される一方で、世界で必要とされる以上の品質が確保されていても、価格の面で折り合わなければ、せっかく日本の技術がセールスに結びつかない、などの問題が議論された。

欧州主導で進む基準の統一化のもとで、複数の民間企業が関与して相手国に鉄道産業を売り出してゆく難しさがあるが、我が国の新幹線により数百キロ離れた都市がひとつの経済圏を形成することが可能となったように、新たな価値の創造とパッケージで展開していってはどうか、との示唆があった。