東京大学政策ビジョン研究センターは、市民後見人養成講座を平成20年度にスタート。その第6期生の履修証明書の授与式が4月20日に開かれ、374名が修了した。
開式にあたりセンター長の坂田一郎さんが式辞を述べた。その要旨は次のとおり。
人口構成の大きな変化は今世紀最大の構造変化だ。超高齢化社会に対して、多面的な角度から学内の研究成果を結集しつつ外部とも連携し研究と提言活動を進めてきた。その中で「高齢者標準」という新しいコンセプトを提示した。高齢者が過ごしやすい、活動しやすい社会を作るという考え方だ。医療や介護だけではなく生活や移動、コミュニケーション、仕事等々、多岐に渡る支援体制を整える。高齢者ひいては障害者を標準にすえた社会の構造改革だ。この概念は、復興庁の復興推進委員会で、目指すべき社会像の一つとして取り入れられた。
地域社会を支える専門家の養成が急務であり、当センターは基本的に研究組織だが、特に重要課題として市民後見人養成講座を運営している。
累計で2303名修了
続いて学事報告を同センターの特任研究員の飯間敏弘さんが行い、374名が無事修了したことを報告。第1期からの累計では2303名にのぼる。
全員の氏名が読みあげられ、履修証明書(学校教育法に基づく証明書)を修了生代表6名に授与。その中から4名がスピーチを行った。
修了生代表4名がスピーチ
山口要さんは「60歳を期に何か社会貢献をしたい」と考え受講。実際に後見人になる難しさも体験した。ここで勉強した事で自分の進むべき方向性がはっきりしたと述べた。
中村真由美さんは「手助けを必要とする人がいる」ことを地域で実感しており、どんな事が出来るかを深く考えられるようになった。
小沼芳明さんは「勉強すればするほど後見の責任の重さをしみじみ感じた。本当に自分に出来るのか」と今でも悩んでいる。客観的評価がない身上監護の難しさを痛感したと話した。
萩原みどりさんは、受講中に親族後見人になったことを報告した。
講師3名が祝辞
養成講座の講師から3名が、来賓として祝辞を述べた。
介護保険制度の立ち上げに関わった厚生労働省年金局年金管理審議官の樽見英樹さんは、制度設計時の予測を超えたものとして、急速な高齢化と支える側の努力の広がりをあげた。この養成講座もその一つであり、「厚生労働省を代表してお礼を申し上げたい」と述べた。
弁護士の小池信行さんは、一人ひとりが何らかの形で成年後見を認知しなければ、制度の維持は難しいと指摘。「後見人の仕事の中心は財産管理ではなく身上監護」と強調した。
品川後見センター所長の齋藤修一さんは、約300名の認知症や障害者への支援を市民と共に続けている。先進国と比べて日本の成年後見制度はまだまだであり、崩壊が進む地域コミュニティーに危機を感じながらも、市民後見人の今後の活躍に期待を寄せた。
閉式の挨拶は東大大学院教授の牧野篤さん。養成講座は合計125時間(座学75時間、実習50時間)だが、これは大学の授業に換算すれば卒論に与えられる単位数に準ずるとした上で、幸せな社会を築く一端を市民後見制度が担っていると指摘。過去の修了生からの希望によりフォローアップ講座を計画していることも紹介した。
なお、第7期生の養成講座は8月末から開催する予定だ。
(取材/竹林尚哉)
第7期養成講座の受講生を募集中
- 8月30日(土)〜 来年1月11日(日)まで計14 回開催(履修総時間124 時間)
- 受講料: 75,000 円
- 会場: 東京大学本郷キャンパ、駒場キャンパス
- 定員: 400 名(定員に達し次第、締め切り)
- 応募資格: 高等学校を卒業した方、あるいはそれと同等以上の資格を有する18歳以上の方
- プログラムの概要:座学と実習によって構成された体系的プログラム。厚労省モデルカリキュラムに準拠しつつ、履修時間、科目、実習等をより充実させることにより、効果的で内容の深いカリキュラムを編成。
※詳細は下記ホームページ参照
http://www.shimin-kouken.jp/course/application.html