「シルバーニューディール」 内需拡大のカギ

この記事は日刊工業新聞に2012年5月21日に掲載された原稿の一部です。

【私の視点】

政策ビジョン研究センター教授 坂田一郎

ポイントは「高齢者標準社会」の構築だ。従来の延長線での発想ではなく、世界でも例がない、史上初めての社会モデルという強い意識が必要になる。「余生」という単語が死語になるような社会づくりを推進すべきだ。

担い手はあくまでも民。官需に頼りすぎるとイノベーションの芽がつまれる。新技術にやアイデアを活用したブレークスルーが重要だ。政府は、民の補完として、テクノロジーの進歩に合わせた制度や基準づくりを急ぐ必要がある。

シルバーニューディールは高齢者だけではなく、「すべての人のための社会」を意味する。たとえばコンパクトで乗り心地の良い乗り物は、高齢者だけでなく若年層にも受け入れられる。結果として潜在的内需を喚起するほか、国全体の雇用創出も期待できる。新社会モデルは、今後高齢化を迎える海外諸国に対する有力な輸出産業の苗床にもなるはずだ。

幸い、産業界だけでなく神奈川県など地域レベルでも高齢者標準の重要性が認識され、取り組みが開始されている。産官学が連携し、全国規模での新社会基盤整備に期待したい。(談)