「衆議院選2012 エネルギー政策」について

A worker installs a solar panel on the Downing Resource Center at Salinas Valley Memorial Hospital. (PRNewsFoto/Salinas Valley Memorial Healthcare System )

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東京大学政策ビジョン研究センター教授 坂田一郎 

主要政党の主張は、再生可能エネルギーの導入加速で一致しているように思われる。世界の潮流でもあり、この点については異論がない。コストや課題を無視すれば、本来、選挙でわざわざ争点とすべきことではない。選挙においては、国民に対して、まず、そのコストを明確に示し、国民に判断を求めるべきであろう。

固定価格買い取り制度の導入により導入が加速されたのは太陽電池である。再生可能エネルギーの中で、日本ほど太陽電池に傾斜した国はほとんどない。他の主要国では、バイオマスを別とすると、コストが相対的に安価な風力発電の発電量が太陽光のそれを上回っている。太陽電池はまた技術的に未成熟なエネルギーである。そのシステム価格は、市場競争と技術革新により一貫して下落を続けており、最近3年で半額程度になっているとの試算もある。今後、次世代太陽電池(有機、色素増感型)の登場も予想され、コストの更なる低下と設置場所の多様化が見込まれる。このことは、導入前倒しは、国民負担を大きくすることを意味している。 安定性についても課題がある。蓄電池の技術がまだ未成熟であり、コストが高く、充放電のロスがまだ大きい中で、太陽光による昼夜の発電量の差異は大きな制約となる。太陽光の比率が高まると、他の電源による変動の調整も次第に難しくなることが見込まれる。

こうしたコストや課題の存在をきちんと説明をした上で、政策について国民の合意を求めるのが政治の本来の在り方考えられよう。事業者や太陽電池の設置を行う家庭の側からみても、これは重要なことである。欧州の例(例えば、導入コストを負担しきれずに固定価格買い取り制度が急変更を迫られたスペイン)をみても、再生可能エネルギーに関する政策の安定性が大きな課題である。国民的な合意がきちんと得られていないと、政策が不安定化する危険性がある。事業者や家庭の協力を得るためにも、政治は、確固とした国民合意を形成すべきではないだろうか。

この文章は2012年12月15日(土)の産経新聞「衆議院選2012 経済政策の焦点(エネルギー)」に掲載された坂田教授コメントの意図を解説した内容になります。