被災者の声に基づく課題分析(ステークホルダー分析)調査
Ver 2.0: 4/21版
東京大学公共政策大学院 特任准教授 松浦正浩
(政策ビジョン研究センター 技術ガバナンス研究ユニット メンバー)
第2報
本文はこちらを参照(Ver 2.0: 2011/4/21版)
被災地域での生活支援や復興に向けた活動は、現地で被災された方々のニーズや関心に合ったものであることが望ましい。本調査は、朝日新聞朝刊の「いま伝えたい 被災者の声」欄に寄せられた被災者の生の「声」をもとに、質的研究支援ソフトウェアを利用したステークホルダー分析を行い、現地の課題、被災者のニーズや関心を抽出・整理した。3月掲載分をまとめた第1報を4月4日に公開したが、4月1日から15日まで掲載された201名(185件)の被災者の「声」を分析した結果を第2報としてここに公開する。
4月に入り、避難生活に必要な物資等の供給は落ち着きが見られ、避難所等における助け合いを通じた連帯感も強化されている。しかし経済活動はまだ再始動の緒についたところで、現地の多くの被災者が雇用機会を必要としているほか、一部の事業主も再開に向けて動き始めたところで、長期的な復興に向けた事業と雇用の再生を勢いづけるための支援がいま強く求められていると考えられる。また、新学期を迎え、子どもに係る「声」も多い。子どもたちは友人とのつながりを強く求めており、親は今後の仮住まいの選択において子どもの教育環境を重視している。今後、仮設住宅地の運用や復興計画の検討に向けて、集落等の連帯感に十分配慮して活用するとともに、経済活動の安定回復に向けた迅速な支援、そして新学期を迎えた避難先の子どもたちが安心して学校へ通えるような支援もまた同時に必要である。
分析結果のポイント
- 現地の被災者の多くが雇用機会を求めており、現地での雇用対策が必要
- 被災地における事業再開に向けた事業主の動きが見られ、融資等による支援が必要
- 子どもの教育環境が、子育て世帯の今後の仮住まいを決める上で重要な要素
- 子どもたちは友人とのつながりを求めている
- 復興に向けた見通し、方針が不透明であることが、被災者に不安を与えている
- 避難が落ち着きはじめたことから、生き残ったことを申し訳なく感じる、海が怖いなどといった、震災・津波による精神的ストレスが目立ち始めており、ケアが必要
- 助け合いを通じて集落や避難所内の被災者間の連帯感がさらに強化されており、仮設住宅地の運用や復興まちづくりにおいて配慮と活用が必要
- 避難生活に必要な物資、エネルギー、医療等へのニーズは落ち着きを見せている
- 避難所の環境改善がみられるが、役場等からの情報不足は引き続き問題
第1報
震災発生から3週間が経過したが、未だ行方不明者の捜索が続き、被災者の方々は避難生活を強いられている状況にある。これから仮設住宅等への入居など、復興に向けて長期的かつ具体的な活動が始まるが、被災地域での生活支援や復興に向けた活動は、現地で被災された方々のニーズや関心に合ったものであることが望ましい。
本調査では、朝日新聞の「被災者の声」欄に寄せられた304名(279件)の被災者の生の「声」をもとに、質的研究支援ソフトウェアを利用したステークホルダー分析を行い、現地の課題、被災者のニーズや関心を抽出・整理した。
分析結果のポイント
- 情報不足と今後の方針、見通しが不透明なために被災者は不安を感じている
- 避難所では助け合いの経験を通じてソーシャルキャピタルが形成
- 集団疎開ではなく地域に残って復興を願う人も多数存在
- 避難所から仮設住宅、応急住宅などへの移転を望む声は強いが、同時に震災前の人間関係が離散することへの懸念も強い
- 子どもを抱える世帯のなかには遠方へと避難した世帯も多数存在する模様
- 被災地の子どもたちには、震災前からの友人との接触とレクリエーションが必要
- 喪失感を感じている漁業者
- 農家への精神的ケアが必要
- 震災前から存在する医療
- 介護ニーズへの対応と医薬品の供給が必要
- 復興に向けて身体的ハンディキャップを抱える人々(高齢者)への配慮が必要