Future Earth 気候工学ガバナンス・プロジェクト

技術ガバナンス研究ユニット内のプロジェクトです。

設置日:15/4/1(2016年3月終了)

趣旨

2015年12月に国連気候変動会議で合意されたパリ協定に象徴されるように、地球温暖化対策は世界的に加速しています。しかしながら、地球温暖化による気温上昇を2度に抑えるという国際的な目標を達成するには、現在の対策が十分でないということは、多くの専門家によって指摘されています。

このように温暖化対策が十分でない現状を受けて、一部の研究者から、人工的に地球を冷却し地球温暖化対策とする方策が提案されています。気候工学(ジオ エンジニアリング)と呼ばれる手法です。最近の国連の科学機関である気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告書でも取り上げられ、2015年には全米科学アカデミーが報告書を発表し、国際的に関心が高まっています。

最も注目されているのは成層圏エアロゾル注入と呼ばれる手法です。科学的には、大規模火山噴火の後に地球全体が冷却する効果をまねるため、一定の科学的根拠があります。

もし、簡単に地球の気温を下げることができれば地球温暖化問題自体が簡単に解決することでしょう。しかし、気候工学をつぶさに見れば様々な問題があることがすぐに分かります。安価であるため、一部の国が全世界の気候をコントロールしてしまう怖れもあります。また、例え地球温暖化対策とはいえ、地球全体の気候を人類が変えるのは倫理的に許されないという意見もあるでしょう。

こうした中、国際的、倫理的、社会的な問題については欧米を中心に議論が始まっています。しかし、日本やアジアでの議論は立ち遅れています。気候工学は世界全体の気候を変えてしまうために、実際に実施されることになれば日本も間違いなく(正か負の)影響を受けることになりますので、日本でも議論を避けることができません。

本プロジェクトでは、日本のFuture Earth研究の推進に貢献するため、超学際の手法を用いて、日本およびアジア・太平洋地域で議論を喚起していき、太陽放射管理のガバナンス研究を進めていきます。

Future Earthについて

Future Earthは、国際科学会議(ICSU)が国連環境計画(UNEP)、国連大学(UNU)、国際社会科学協議会(ISSC)および有力国の研究資金配分機関で構成するベルモントフォーラム(BF)との連携で進めている統合的地球環境変化研究プログラムです。学際的な研究に加えて、研究者コミュニティ以外の(政策・行政担当者、経済界、各種NGO/NPOなどの)ステークホルダーとの協働(トランスディシプリナリティ)を通して、地域から地球全体の環境保全と持続可能性を追求するところにその特色があります。Future Earthではこの特色を超学際 transdisciplinarity と呼んでいます。

気候工学についても、気候科学・気象学は当然のことながら、工学、生態学、政治学、倫理学、社会学など様々な学問分野の知識を動員して検討する必要性があります。また、理想的には世界中のステークホルダーや一般市民の意見を反映する必要性があります。したがって、超学際の手法はまさに気候工学の議論にとって必要なものです。

イベント開催報告

気候工学の研究課題案を考えるワークショップ(2015年7月26日開催)
International Workshop on Climate Engineering: Toward Research Collaboration in the Asia-Pacific Region(2016年3月22日-23日開催)

プロジェクトリーダー

杉山 昌広 准教授(政策ビジョン研究センター)

プロジェクト構成メンバー

分担者

石井 敦(東北大学東北アジア研究センター准教授)、小杉 隆信(立命館大学政策科学部教授)

協力者

朝山慎一郎(国立環境研究所)、江守正多(国立環境研究所)、水谷広(日本大学)、藤原正智(北海道大学)、渡辺真吾(海洋研究開発機構)、黒沢厚志(エネルギー総合工学研究所)、足立治郎(JACSES)、Andrew Parker (Institute for Advanced Sustainability Studies,ドイツ)、John Moore (北京師範大学, 中国)、Wil Burns (American University, 米国)、Joshua Horton (Harvard University, 米国)

関連情報・リンク

気候工学の簡単な解説(2ページ)

資金源

科学技術振興機構(JST)社会技術研究開発センター(RISTEX)
研究領域:「フューチャー・アース構想の推進事業」

研究課題:「気候工学(ジオエンジニアリング)のガバナンス構築に向けた総合研究の可能性調査」