ファッションの法的保護
2014/7/18
AFP=時事
背景
米国においてファッション関係の訴訟が増加していることを受けて、”Fashion Law”(ファッション・ロー)という概念が誕生し、複数のロースクールでコースが設立されている。
ここでの「ファッション」という言葉に明確な定義はないが、概ね「身につけるもの」すなわち、衣服、帽子、鞄、靴、眼鏡、アクセサリーなどが含まれると考えるのが一般的である。
米国の動きの背景の1つには、近年増えつつある最新の流行を取り込んで低価格に抑えた衣料品であるいわゆる「ファスト・ファッション」とデザイナーズ・ブランドとの間での争いがある(米国のファスト・ファッションの某メーカーは5年間で50回の訴訟提起を受けている)。
こうした中、米国では衣服デザインを保護するために著作権が主張されて部分的に認められることが多いこともあり、ファッション保護のために「著作権法」を改正しようとする動きがある。これに対し、フランスを除くEU諸国では主に意匠法で保護される。
我が国を見れば、ファッション・デザインの保護として考えられるのは、意匠法、著作権法、不正競争防止法(特に2条1項3号の形態模倣)等となる。本来的には意匠法の保護によるべきであろうが、商品サイクルの早いファッション業界においては時間と費用の関係からほとんど用いられていないのが現状である。一方でファッション関連製品は実用品であるとして著作権による保護は難しいと考えられているため、ファスト・ファッションに対しては主として不正競争防止法2条1項3号による規制が中心という実情がある。
このように、ファッション・デザインは、国によって著作権法(フランス、今後は米国も)、意匠法(EU)そして不正競争防止法(日本)がそれぞれメインとなるという状況であり、全く統一がとれていない。他方でファッション・ビジネスのグローバル化も進展している。
そこで、「デザイン法研究会」では今後、米国におけるファッション・ローの研究内容をフォローしつつ、最終的には、国際ハーモナイゼーションの視点も加え、日本における今後の法改正の必要性の有無等について提言することを視野に研究を進めていくこととする。