国際シンポジウム: Joint Fact-Finding
平成23年度 市民参加による熟慮型
地震リスク分析の社会実験研究
共同事実確認方式による原子力発電所の地震リスク分析の可能性
趣旨
東日本大震災以降、原子力発電に関するさまざまな科学的情報が表出しているが、これらの情報を受け止め、社会的意思決定に関わる国民は、溢れる情報をいかに理解し、意思表明や政治参加へと関わるべきか、難しい判断に迫られている。しかし、情報の流通を制約、統制することは、共有されるべき事実の隠蔽を助長しかねない。むしろこれからは、多様な科学的情報を許容しつつ、それらをいかに整理して共有し、国民による社会的意思決定へとつなげられるかがチャレンジといえるだろう。
米国では、科学的情報の対立による混乱を収拾し、整理する手法として、共同事実確認(Joint Fact-Finding)が用いられた事例がある。多様な、時には結論が対立する科学的情報を吟味し、背後にある前提条件、モデル、感度分析等を含めて公開した上で、関係者がある程度納得できる科学的情報と、現在の科学の限界を整理することで、社会的意思決定をできるだけ科学的情報に基づくものとする取組みが共同事実確認である。
日本でも、原子力発電の地震リスクについて、多様な科学的情報が出てきている。これらの情報を、共同事実確認方式により、背後の想定まで含めて国民が納得できる形で整理し、共有することで、原子力発電の今後に関する意思決定を、より多くの国民が納得できる、より科学的根拠に基づいたものとすることができるのではないだろうか。本シンポジウムでは、米国の先行事例についてお話を伺うとともに、私どものプロジェクトから情報提供をさせていただき、最後にパネルディスカッション・質疑応答を行うことで、地震リスクに関する共同事実確認の可能性と課題について模索したい。
【日時】 平成23年12月16日(金)9:30〜12:00
【場所】 東京大学本郷キャンパス 工学部2号館 213号講義室(地下1階)
【主催】 政策ビジョン研究センター
※日英同時通訳付
※入場無料・事前申込制
Joint Fact-Finding(共同事実確認方式)について
プログラム
9:30〜9:40 開会の挨拶
城山英明 東京大学政策ビジョン研究センター センター長
9:40〜10:10 基調講演
原子力の政策決定プロセス 〜米国の2事例から学ぶ〜
アリソン・マクファーレン ジョージメイソン大学 准教授(環境科学・政策)
10:10〜10:40 基調講演
米国のエネルギー意思決定におけるステークホルダー関与の改善に向けた
共同事実確認手法活用事例
ジョナサン・ラーブ ラーブ・アソシエーツ社代表
10:40〜11:00 講演
日本における共同事実確認の利用 〜必要性と可能性〜
松浦正浩 東京大学公共政策大学院 特任准教授
11:00〜11:20 講演
地震・津波リスク評価と耐震設計の論点 〜専門家ヒアリング中間報告〜
土屋智子 東京大学政策ビジョン研究センター 客員研究員(シニア・リサーチャー)
11:20〜12:00 パネルディスカッション・質疑応答
基調講演 概要
原子力の政策決定プロセス 〜米国の2事例から学ぶ〜
The policy-making process for nuclear power: two examples from the United States
アリソン・マクファーレン
ジョージメイソン大学 准教授(環境科学・政策)
米国では原子力が論争の種となっており、推進派と反対派が両極端にわかれている。そのような雰囲気のなかでは、原子力にかかわる有効な政策を形成することは困難である。今回の講演では、米国における2つの試みを紹介する。キーストーンセンターの原子力JFFは、原子力の懐疑派と推進派を集めて、原子力に係る経済、気候変動の影響、保安と安全保障、廃棄物と再処理、核拡散への影響についてとりまとめた報告を作成した事例である。また、現在、米国における原子力燃料サイクルのバックエンドについての政策形成として、ホワイトハウスによって任命された、アメリカの原子力の将来を考えるブルーリボン委員会についても紹介する。
米国のエネルギー意思決定におけるステークホルダー関与の改善に向けた
共同事実確認手法活用事例
U.S. Experience in Using Joint Fact Finding to Improve Stakeholder Engagement in Energy Decision-making
ジョナサン・ラーブ
ラーブ・アソシエーツ社代表
共同事実確認や関連する手法を通じて、ステークホルダーや市民をより意味ある形で政策や立地問題に巻き込むことで、エネルギーに関連する意思決定の有用性と正統性を同時に高めることができる。今回の講演では、事例を紹介し、米国内のエネルギーに関する重要な問題について共同事実確認を適用した事例を、理論と実務の両面から検討する。
会場地図
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