医療イノベーションワークショップ
医療イノベーションにおけるハーモナイゼーションの展望
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開会挨拶
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樋口範雄
東京大学大学院法学政治学研究科 教授
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基調講演
Mr. Michael Gropp
(GHTF)
講演資料:International Regulatory Harmonization and Medical Technology Innovation
パネルディスカッション
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林良造(モデレーター)
東京大学公共政策大学院 客員教授
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大西昭郎
東京大学公共政策大学院 客員教授
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城山英明
東京大学政策ビジョン研究センター センター長
公共政策大学院副院長 教授
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松本洋一郎
内閣官房医療イノベーション推進室長
東京大学大学院工学系研究科 教授
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三村まり子
ノバルティスファーマ・ホールディングスジャパン
取締役法務・知的財産統括部長、弁護士
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山本晴子
国立循環器病研究センター研究開発基盤センター
先進医療・治験推進部 部長
報告要旨 規制のハーモナイゼーションによる更なるイノベーションを
4月13日、伊藤謝恩ホールにおいて、ワークショップ「医療イノベーションにおけるハーモナイゼーションの展望」が開催されました(主催・東京大学政策ビジョン研究センター、共催・東京大学公共政策大学院損害保険ジャパン寄付講座「公共政策とリスクマネジメント」)。
今回のワークショップの目的は、医療イノベーションにおけるハーモナイゼーションの意味を再確認し、わが国で取り組むべき課題についてより明らかにすることです。
まず、医療機器分野における規制のハーモナイゼーションで著名なマイケル・グロップ氏(Global Harmonization Task Force, GHTF設立委員)が、「国際的な規制のハーモナイゼーションと医療技術のイノベーション」について、基調講演をしました。この中で、規制のハーモナイゼーションとは、知的な資源のプールとシェアをめざしており、「研究開発投資」や「満たされていない臨床上および公衆衛生上のニーズを解消するイノベーション」を促進するものです。このようなイノベーションは、先進国だけでなく、発展途上の国々の医療上のニーズを持続的に満たしてゆくために重要です。医療分野では、より安全で有効な質の高い技術を臨床現場に届けるために、世界各国でさまざまな規制がおこなわれています。そして、経済統合や自由な通商が進めば、技術的な面での規制のハーモナイゼーションが必要になります。その一方で、規制者(それぞれの政府や市場)が増えれば、規制者の協力や情報の交換が生じます。そして最後にグロップ氏は、マーケットの拡大に応じて追加的にかかる法令遵守のためのコストをできる限り小さくすることでイノベーションを促進できれば、満たされていない臨床上および公衆衛生上のニーズの解消にもつながるし、持続的な社会の発展をもたらすことにもなるのではないか、と問いかけました。
パネルディスカッションには、林良造客員教授(公共政策大学院)をモデレータとして、松本洋一郎教授(内閣官房医療イノベーション推進室長)をはじめとする専門家が参加し、医療イノベーションという切り口でハーモナイゼーションについて議論しました。主な話題には、医療技術ごとの違い、とりわけ医薬品と医療機器の違いに応じたイノベーション推進のあり方、薬事のみならず、知財、保険償還まで含めたハーモナイゼーションの議論の必要性、自発的な規制の収斂の一例やその難しさ、ハーモナイゼーションの前提となる規制の透明性、医療技術に関する情報提供やリスクコミュニケーション、そして研究開発投資の促進などが含まれています。
パネリストの1人である城山英明教授(政策ビジョン研究センター長)は、規制のハーモナイゼーションが進みやすい領域、ハーモナイゼーション推進の枠組みが幾つもあることの弊害、安全性のレベルを下げることなく規制コストを下げる手法、医療技術の消費が拡大する発展途上国から規制上の費用を負担してもらう可能性などについて、発言しました。
今回のワークショップでは、規制のハーモナイゼーションについて、研究開発投資を通じて、より優れた医療技術をより多くの人々に届けて、満たされていない医療上のニーズを解消するというイノベーションを促進するものであることを確認しました。わが国で進められている医療イノベーションでは、世界最高水準の医療を国民に提供(患者目線での医療の質向上)するとともに、医療関連分野を成長産業に育成することが目標に掲げられています。政策ビジョン研究センターでは、今回を皮切りに、世界で最も早く高齢化を迎える我が国において、今後、持続的な経済成長と健康長寿社会を実現するための基礎的な研究と発信を続けて参ります。
(佐藤智晶 政策ビジョン研究センター特任助教)
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規制のハーモナイゼーションを通じた医療イノベーションの可能性
(政策ビジョン研究センター 特任助教 佐藤 智晶)