SSUフォーラム:栗崎周平准教授、Taehee Whang准教授
日時: | 2014年1月8日(水)10:30-12:30 |
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場所: | 東京大学伊藤国際学術センター 3階 特別会議室 |
題目: | “International Crises and Political Costs: Structural Estimation of the Audience Cost Model” |
講演者: | 栗崎周平准教授(早稲田大学)、Taehee Whang准教授(高麗大学) |
言語: | 英語 |
第3回SSUフォーラムは、早稲田大学政治経済学部の栗崎周平准教授と高麗大学国際学部のTaehee Whang准教授を迎えて行われた。今回は、飯田敬輔教授が司会を務めた。
まず、栗崎准教授とWhang准教授による研究の報告が行われた。彼らは、“Detecting Audience Costs in International Disputes”と題する論文の中で、国際政治上の危機における政策決定過程の計量分析において問題となるオーディエンスコストについて、統計モデルを用いることによってその定量化を試みている。この論文はまず、初めてオーディエンスコスト(AC)を理論化した1994年のJames Fearonの論文など、これまでのACに関する文献を検討している。ACに関する議論は、理論的な領域(ミクロ的基礎に関する統一した見解がない)や実証的な領域(確かな経験的証明がなされていない)などに分かれて発展がみられる。
栗崎准教授とWhang准教授らの研究は、観察されたデータに基づいてACが存在することを証明することによって、ACモデルの実証的基盤の構築を提起している。彼らは国家の民主化の度合とACとの関連を示し、加えて戦争コストと比較可能なACを数値的に定めることを試みている。さらにこの論文は、敵国に対して強制を行う際にACは統計的、実質的に大きな影響があることを示している。最後に、ACの信念更新(belief updating)は統計的に有意であるが、数値化はできないと論じている。
報告者の発表後に行われたQ&Aセッションにおいては、研究手法上の前提について議論が集中し、実証部分が依拠しているデータセット(1919-1939年の国際政治上の危機)によって、現在や将来の国際政治上の危機において同様の議論が適用可能なのかが議論された。これに対し彼らは、発見に役立つツールを発展させるものであり、またこのテーマはまだ発展途上のものであると説明した。また、この研究は即座に現実の政治状況を説明できるものではなく、戦争開始決定の因果関係を説明できるものではないが、これまでの過去の文献で示されているものよりもより包括的なモデルを提示することによって様々な要因の関係の明確化を試みていると説明した。
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早稲田大学 准教授
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高麗大学 准教授