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SSUフォーラム: マイク・モチヅキ教授

日時: 2014年3月14日(金)10:30-12:00
場所: 東京大学伊藤国際学術センター 3階 中教室
題目: “The US Rebalance Toward Asia: Implications for Japan-China Relations”
(「米国のアジアへのリバランス:日中関係への影響」)
講演者: マイク・モチヅキ教授(ジョージワシントン大学エリオット国際関係大学院)
言語: 英語

第5回目のSSUフォーラムでは、ジョージワシントン大学エリオット国際関係大学院のマイク・モチヅキ教授を迎え、“The US Rebalance Toward Asia: Implications for Japan-China Relations”(「米国のアジアへのリバランス:日中関係への影響」)と題する講演をいただいた。

司会を務めた藤原帰一東京大学政策ビジョン研究センター安全保障研究ユニット長は、特に沖縄の米軍基地移転をめぐる政治課題への分析など日本の外交政策分析への卓越した貢献を挙げてマイク・モチヅキ教授を紹介した。

モチヅキ教授は、東京大学本郷キャンパスに再び来ることができた喜びを述べた後、米国のアジアへのリバランスに関して、現在の東アジア国際政治情勢に対する一般的なリアリストの説明を分析することから議論を始めた。多くのリアリストの議論は、中国が台頭するに伴い、東アジアにおける米国の軍事的優位が衰退していることを強調する。しかし、モチヅキ教授は、中国は軍事的優位を獲得しておらず、近い将来米国にとって代わる地域覇権国になる立場にはないと述べる。現在の最大の課題は、軍事的なものではなく、政治的なものである。

また、通常のリアリストの視点によれば、台頭する中国に対しバランシングするために、米国と日本は同盟の強化を行うことが予期される。ジョン・ミヤシャイマーの唱える攻撃的リアリズムによると、中国は地域覇権を求めることが予期される。しかし、ミヤシャイマーは、オバマ政権によって推進されているリバランスとは異なるものを推奨している。彼は、米国が東アジアへの前方展開と同盟国の直接防衛ではなく、「オフショア・バランシング」へ移行すべきだと提唱する。ミヤシャイマーは、前方展開軍による直接の保護は、東アジア諸国に安全保障の「ただ乗り(フリーライド)」をする機会を与えることとなり、それは同時に米国の負担を意味すると論じている。

リアリストの伝統においても、東アジアの軍事情勢とその将来について様々な解釈が存在する。これまでのところ米国は、「撤退すべき」と述べるミヤシャイマーの意見には従っていない。一方、展開部隊の絶対数の減少(現在2000年比で50%である)は継続すると予想されるものの、米政府は海軍力の増強や軍事装備の向上も検討している。米国は、同盟国や友好国がより共通の安全保障課題に取り組むことに関心を寄せている。日米については、異なる優先順位や共有する利益や価値についての明確な見取り図を持つことによって、「巻き込まれ」と「見捨てられ」という二つの極端な状況を避けるよう慎重に管理する必要がある。この同盟のジレンマは、同盟国間によって管理されなければならない。これは、日本が第一に対応すべきである多くの低烈度紛争の「グレーゾーン」があることを考え併せると特に重要である。モチヅキ教授は、中国の長期的な意図が不明確な時期において、米国と日本は同盟のジレンマを緩和するために防衛政策を慎重に調和させる必要があることを強調した。