PARI

Read in English

SSUフォーラム:沈丁立教授

日時: 2014年5月14日(水)10:30-12:00
場所: 東京大学伊藤国際学術センター 3階 中教室
題目: “Improving Sino-Japanese Relations”(日中関係の向上)
講演者: 沈丁立(復旦大学教授)
言語: 英語

2014年5月14日、復旦大学から沈丁立教授(復旦大学国際問題研究院常務副院長)を招いて第10回SSUフォーラムが行われた。
沈丁立教授は、“Improving Sino-Japanese Relations”(日中関係の向上)という題で講演を行った。

藤原帰一安全保障研究ユニット長は、沈丁立教授を、軍備管理から中国の外交政策にわたる国際関係の様々な領域において多大な知的貢献を行っている人物であると紹介を行った。

沈教授は、司会者に感謝を示した後に、自らを中国における学者であり知識人であると説明を行った。沈教授は、その後日中関係についての彼の見解を示し、より伝統的な儒家の教えに照らして中国の役割を理解することによって、日中関係を改善する道を提示した。沈教授は、中国と日本との間の肯定的な相互作用が際立っていた歴史を想起したが、その中では先生と生徒の役割が幾度も入れ替わった。古代においては、中国は日本の文化に大きな影響を与え、近代には日本は西欧近代と伝統的アジア文化の仲介者として働き、中国はその利益を享受した。

このような歴史的背景がある中で、現在の日中の間に協力関係が欠けていることは非常に残念であると沈教授は述べた。リーダーシップのスタイルの変化と伴に、国内や国際問題におけるナショナリズムの役割に対する再評価を含めた政治状況に対する認識の変化が起きない限り、このような状況の大規模な進展は見込めないだろう。

日中両国で現在支配的な政治文化の変化が必要であることは、日中間における最も切迫した二つの問題を見ても分かる。それらは、日本の管理下にある尖閣諸島に対する中国の領土的主張と、歴史記憶やその解釈をめぐる論争である。前者の問題に関して、沈教授は、偶発的軍事衝突を防ぐための措置の構築や、さらにはこの地域の非軍事化の重要性について主張した。また教授は、中立的な第三者を介した形であっても、二国間で対話や外交交渉を進めることの必要性を強調した。

後者の歴史記憶の問題に関しては、両国において歴史がどのように理解されるのかについて大幅な再解釈が必要である。中国における日本の虐殺に関してはより体系的かつ、正確で反証不可能な証拠の束によって支持される必要がある。一方、日本は過去と関連した姿勢の象徴的価値を理解するよう努力する必要がある。その結果、そのような象徴が政治的な目的のために用いられる際にはより慎重になるだろうし、より真摯な謝罪を示すようにもなるだろう。

沈教授は、儒家の教えにおける寛大・寛容・学びへの専念・人間関係の育成こそが、現在支配的な政治文化を向上させ、国際政治、特に日中関係における真の変化を促す最も重要であり、唯一の道であるだろうと述べた。