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SSUフォーラム: ウィリアム・グライムス教授

日時: 2014年6月10日(火)10:30-12:00
場所: 小島ホール カンファレンスルーム
題目: “East Asia Goes Venue-Shopping: When Global Influence Does Not Reinforce Regional Solidarity”
講演者: ウィリアム・グライムス教授(ボストン大学国際関係学部)
言語: 英語

2014年6月10日、ボストン大学国際関係学部のウィリアム・グライムス教授を招いてSSUフォーラムを行った。テーマは、 “East Asia Goes Venue-Shopping: When Global Influence Does Not Reinforce Regional Solidarity”であった。

今回のフォーラムは、飯田敬輔教授が司会を行った。飯田教授は、東アジアの金融政策と地域主義の優れた専門家としてグライムス教授を紹介した。

グライムス教授は、本日のテーマがこれまで書いた論文に一部基づいており、また現在執筆中のグローバルレベルにおける地域の「代表性(representation)」に関する論文の準備ともなっていると述べ、このテーマがどのように生み出されたのかを説明した。

このテーマは、アジアと世界政治との関連に関する最近の傾向に位置付けられる。政治・経済的により重要性を増すにつれ、東アジア諸国は、世界的枠組みにおける代表性も同様に拡大している。実際、G7においては日本ただ一国のみであったが、G20では日本、中国、韓国、インドネシアの4ヵ国が参加している。およそすべての世界的枠組みにおいて代表性が極めて高いヨーロッパに対して、東アジア諸国は地位の向上を反映してその代表性を高めていると言える。

このような議論を踏まえ、グライムス教授は「グローバルレベルにおける東アジアの代表の増加は、地域協力を強化するか?」という研究課題を立てた。教授の論文は、グローバル−地域関係の理解のための枠組み構築を目的としており、中期的には好循環は望めないと示している。地域協力とグローバル代表の関連を説明する変数として、共有利益、発言力、地域の力構造が挙げられている。共有利益は、争点の性質、公共財/共有財へのアクセス、リンケージの可能性に基づくものである。発言力は、グローバルレベルでの代表者の数によって示され、地域の力の集中はそれぞれの地域における強国の数によって表される。教授が計画している論文において、地域協力とグローバルレベルにおける地域の代表性の間の好循環は、共有利益と地域統合/協力の継続、及びグローバルレベルにおける発言力によって地域のための財を獲得する能力に応じて生み出される。だが、地域内の利益の多様性、代表国間の過度な政治的競争、域内の脅威認識の高まりなどによってこの好循環は損なわれるだろう。

続いてグライムス教授は、ヨーロッパと東アジアの状況の比較を行った。ヨーロッパは強固に統合され、政治・経済・社会問題において広く利益が共有されている。力の集中の程度は低く、真の意味での覇権国は存在しない。一方、多くの世界的枠組みにおいて過剰に代表を派遣している。域内の脅威認識も1945年以前と比べ圧倒的に低い。

東アジアにおいては非常に異なっている。つまり、統合度合は低く、利益の共通部分は限られており、大部分は経済領域に関するものである。力の集中度合は高く、二極構造であり現在激しく変動している。地域全体はより多くのグローバルな発言力を得ている。領内の脅威は長い間穏やかであったが、近年高まっている。

以上の要因を考慮した上で、グライムス教授は、東アジアのグローバルレベルにおける発言力の上昇は地域協力を支援せず、日本はもはやグローバルな発言力によって地域内の指導力を強化することはできないと述べる。中国の台頭に対抗するためにグローバルな発言力を利用しようとする地域アクターもいるが、概して東アジア諸国はアドホックな域内協力・域外協力の戦略を進めていくことが予期される。