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SSUフォーラム:谷口智彦教授

日時: 2014年11月18日(火)10:30-12:00
場所: 小島ホール カンファレンスルーム
題目: Japan's “Lippmann gap” and PM Abe's Diplomacy
講演者: 谷口 智彦(内閣官房参与/慶應義塾大学大学院教授)
言語: 英語

2014年11月18日、谷口智彦教授(内閣官房参与/慶應義塾大学大学院)を招き、第15回SSUフォーラムを開催した。谷口教授は、‘Japan's “Lippmann gap” and PM Abe's Diplomacy’というテーマで、現政権下における日本の外交政策の最も重要な特徴を説明した。

藤原帰一安全保障ユニット長は、谷口教授を、現在安倍内閣で参与を務める日本の外交政策の第一人者であり、最近の内閣の成功の立役者であると紹介を行った。

谷口教授は始めに、講演の主題は安倍政権の外交についての評価を示すことであり、最後に近日行われる解散総選挙など内政についても簡潔に見解を述べたいと、講演の全体像を示した。

日本の外交政策の認識枠組みに関して、谷口教授は、可能な選択肢を制限する日本の地理的位置の重要性について強調した。日本は、ペルシャ湾からマラッカ海峡、東シナ海、日本海に渡る長大なシーレーンの終点に位置する島国である。日本は海洋国家、貿易国家であり、他の特に民主主義国である海洋国、貿易国と利益を共有している。このような要素を考慮すると、可能な外交政策の選択肢は限られたものとなる。谷口教授は、予期できる将来においても、現在の同盟システムは維持されるだろうと述べた。アジアの巨大な大陸国である中国と良いバランスを維持することは、日本の地理的位置のため、外交政策の主要な目標の一つとなる。まさにこの地理的位置が、中国との関係を日本の安全保障にとって死活的な問題としているのである。

こうした背景のもと、日本の外交政策は特定の個人に依拠するものではなく、上記のような前提条件に依存する部分が大きいと谷口教授は指摘する。実際に、安倍首相によって取られた外交政策の多くは前政権、特に野田政権(2011-2012)とその東南アジアへの外交活動の継続である。だが、安倍首相は、政権についてから23ヵ月の間に50ヵ国を歴訪するなど、その外交政策のレベルを一段階引き上げた。2020年の東京へのオリンピックの招致成功は、彼の外交努力の賜物でもある。より重要なことは、インドやオーストラリアとの緊密な協力関係の継続である。この関係は、海洋や東南アジア地域全体の安全保障の確保という日本にとって戦略的な価値を有すると谷口教授は語る。東南アジア諸国との精力的な関係構築もこの観点から説明される。安倍首相は、東南アジア諸国を回り、10ヵ国すべてにおいて温かい歓迎を受けた。

谷口教授は、第二次大戦後、日本の外交的孤立を打開するために数多くの国々を訪問した岸信介首相(1957-1958)と比較して安倍首相の外交活動を説明した。谷口教授は、世界の場における日本の存在感を高め、多くの国との友好的、建設的で確かな関係を築くことで、日本の「リップマン・ギャップ」—国家の外交政策の潜在力と国際政治における実際の関与の程度との差—を縮小しようとした安倍首相の活動は、岸首相と類似した役割を果たしていると述べた。

最後に、近日発表される解散総選挙について触れ、これは不可避の困難を先送りにしないという、安倍首相の態度の表れであると説明した。