SSUフォーラム:ベス・シモンズ教授
日時: | 2014年12月3日(水)13:00-14:30 |
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場所: | 伊藤国際学術研究センター 3F 中教室 |
題目: | Indicators as Social Pressure in International Relations: The Case of Trafficking in Persons |
講演者: | ベス・シモンズ(Clarence Dillon Professor of International Relations, Harvard University) |
言語: | 英語 |
共催: | 科研プロジェクト「経済と安全保障の交錯」 |
2014年12月3日、ベス・シモンズ(Clarence Dillon Professor of International Relations, Harvard University)を招き、第16回SSUフォーラムを開催した。シモンズ教授は、“Indicators as Social Pressure in International Relations: The Case of Trafficking in Persons”と題して講演を行った。
冒頭に、「ソフトパワー」、国際法、国際制度、規範、人権の研究に対する多大な貢献を行っている研究者であると飯田敬輔教授によって紹介が行われた。
シモンズ教授は、過去二十年、国家(やその他の組織)はそのパフォーマンスについて常に評価が行われるようになってきており、特に近年その傾向は加速していると説明し講演を開始した。このような評価によって、様々な順位、格付け、指標が生み出されている。これは財政状況、環境政策、人権侵害、汚職などおよそすべての分野において見られる。
シモンズ教授は、ジュディス・ケリー教授(Duke University)と共に、この比較的新しい現象の影響や将来の展開について理解を深める共同プロジェクトを行った。特にGlobal Performance Indicators(GPIs)に着目した。
GPIsは、その対象とする分野が広範にわたるだけでなく、それを生み出す機関や国も幅広い。ほとんどのGPIsは、国際機関、民間機関、NGO、大学、シンクタンク、国家によって作られている。およそ半分のGPIsは米国に拠点を置く機関によって、残り半分は英国、スイス、ドイツなどヨーロッパから生み出されている。シモンズ教授は、西欧主体の現状に対抗して、今後他の諸国によって独自のGPIsが作られることにより、この国家の構成比に変化が生じるか否か興味深いと述べた。
次に、シモンズ教授は、GPIsの政治的影響について説明した。GPIsは単に観察指標というだけでなく、国家の国際的評判に影響を与えていることが見て取れる。これは様々な結果を生み出す。政府は、順位を上げるような政策形成や、評価を高めるために援助などの国際プログラムに参加しようとするだろう。一方、GPIsの存在自体と、評価の方法についても政治行為として捉えられなければならない。これらは政治的な競争や対立を形づくる。
講演の後半部分において、シモンズ教授は人身取引の問題を具体例として取り上げた。米国政府は毎年『人身取引報告書』(Trafficking in Persons Report, TIP)を発行し、人身取引に対する各国の取り組みの評価を行っている。この報告書の目的は、世界中で人身取引の違法化への圧力を掛け、各国の国内法を変化させるよう呼びかけることである。
興味深いことに、シモンズ教授はウィキリークスの外交公電に基づくワードクラウドを用いて、米国国府省において人身取引の問題が重要な関心を集めていることを示した。この報告書は、国家の国際的な評価や地位への圧力となることによって、人身取引の違法化を行っていない国の政策変化に対して積極的な役割を果たす余地があると、シモンズ教授は論じた。
最後にシモンズ教授は、国際関係を論じるにあたり、「ソフトパワー」研究の枠内において、GPIsの創出や国際的な管理について今まで以上に注目する必要があると強調して講演を終えた。
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Clarence Dillon Professor of International Relations,
Harvard University