SSUフォーラム:青井千由紀教授
日時: | 2014年12月17日(水)18:00-19:30 |
---|---|
場所: | 伊藤国際学術研究センター 3F 特別会議室 |
題目: | 安定化への適応:国連平和活動ドクトリンへの示唆 |
講演者: | 青井千由紀(青山学院大学国際政治経済学部教授) |
言語: | 英語 |
2014年12月17日、青井千由紀教授(青山学院大学国際政治経済学部)を招き、第17回SSUフォーラムを開催した。青井教授は、「安定化への適応—国連平和活動ドクトリンへの示唆」と題して講演を行った。
冒頭、藤原帰一教授(東京大学政策ビジョン研究センター安全保障研究ユニット長)より、青井教授の紹介が行われた。青井教授は、安定化や反乱対策(counterinsurgency)について理論的・実践的観点から研究を行っており、冷戦後の国連の任務に関する研究に多大な貢献を行っている。
今回のSSUフォーラムにおいて、青井教授は、特に武力紛争が起きた国家の「安定化」(stabilisation)を目的とした国連の「平和活動」に関わるドクトリンについて講演を行った。その中心的テーマは、コンゴ民主共和国やマリなどに見られる近年の国連平和活動がその実施と政治目的の両面において変化している点を考慮に入れたドクトリンの形成についてであった。
2000年のブラヒミ報告を改定し、2008年に国連が提示したドクトリンは、近年の変化に対応しておらず、これを批判的に再検討する必要があると青井教授は述べた。近年の平和維持ミッションは、事前の和平合意の履行にとどまらず、和平合意が無い状況における市民の保護など未だ政治的決着がなされていない場合にも派遣され、「攻撃的」側面をも有している。
とくに重要なのが「安定化」概念の明確化である。この概念は国連の任務において使用されているにもかかわらず、体系的に明確な教義上の定義をもって用いられてはいない。
青井教授は、この安定化概念の定義に向けていくつかの方法があることを示した。一方で、安定化と反乱対策との境界の明確化や、より広義の平和維持・平和支援概念との区別の問題があることを指摘した。
安定化の本質は、政治的目標を伴うプロセスであり、非政治的な「中立的」「活動」ではない。これは安定化の定義についてもう一つの課題を突き付ける。つまり、安定化とは、その現地の状況に依存しているという点である。現地のコミュニティー、エリート、交戦主体の同意という問題が関係する場合は特に難しいと言えるだろう。
また青井教授は、ボスニア(1992-1995)とマリ(2013)における活動を例に、適切なドクトリンがない中で安定化ミッションを遂行することは困難であると強調した。さらに、マリで現在進行中のミッションなどにおいて、これらの問題を軽減するために戦術面・軍事面における専門家の確保に加え、新たな技術や方法論が導入されていることを紹介した。
-
青山学院大学国際政治経済学部教授