5th Korea-Japan Dialogue on East Asian Security 2016
日時: | 2016年11月5日(土) |
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場所: | ソウル大学 セミナールーム |
主題: | 5th Korea-Japan Dialogue on East Asian Security 2016 |
言語: | 英語、日韓同時通訳 |
共催: |
ソウル大学米中関係研究センター 東京大学政策ビジョン研究センター安全保障研究ユニット(SSU) |
Saturday, November 5, 2016 – Full-day Workshop
Welcome Remarks and Opening Remarks 09:30-09:45
Jae Ho CHUNG (Seoul National University) & Akio TAKAHARA (University of Tokyo)
Session 1 09:45-11:45 on Assessing China’s domestic situations
Moderator: Jae Ho CHUNG (Seoul National University)
Presenters: Jaehwan LIM (Aoyama Gakuin University)
Yukyung YEO (Kyunghee University)
Lunch Break 11:45-13:00
Session 2 13:00-15:00 on US-China Relations and Northeast Asia
Moderator: Akio TAKAHARA (University of Tokyo)
Presenters: Jae-Cheol KIM (Catholic University)
Masafumi IIDA (National Institute of Defense Studies)
Coffee Break 15:00-15:20
Session 3 15:20-18:00 on Assessing Korea-China and Japan China Relations
Moderator: Seiyoung CHO (Dongseo University)
Presenter: Hankwon KIM (Korea National Diplomatic Academy)
Shino WATANABE (Sophia University)
Dinner 18:30
2016年第5回日韓セミナーレポート
平成28年11月5日、ソウル大学にて、第5回日韓対話(5th Korea-Japan Dialogue on East Asian Security 2016)が開催された。①中国国内情勢の変容、②北東アジアにおける米中関係、③中韓・日中関係の3つの分野にわたって、研究成果の発表と、活発な意見交換が行われた。
午前中のSession I(9時45分~11時45分)は、中国国内情勢につき、軍事改革と経済政策についての報告と討論が行われた。軍事改革に関する報告では、同改革は中央の統制から「戦区」への権限の移管に特徴があること、また目的は陸海空ロケットの各軍種を統合した「連合作戦」能力の向上にあること、さらにこうした改革が可能となったのは、習近平以前から行われてきた制度化と法律中心の軍統制の成果であり、断絶よりも継続の側面が強いことが指摘された。これに対しては、習近平個人の軍に対する政治的影響力、軍中央の統制の強度、軍事改革が軍内部の情報共有に及ぼす影響、政治部の役割、軍事ドクトリンとの関連、陸軍中心の戦区人事が改革と軍事的効率性に及ぼす影響、反腐敗闘争との関連、中国国内の社会経済状況の影響、といった、多岐にわたる質疑応答が行われた。
経済政策に関する報告では、現在中国で行われている経済改革が、習近平とその側近のイニシアティブにより、成長よりも構造改革に重点を置き、民間投資を重視するものとなっているが、国営企業問題をはじめとして限界も多いことが指摘された。また、成長を重視する李克強グループと構造改革を重視する習近平グループに方針の違いがあること、さらに習近平の権力強化は集団指導体制を変更するものではないとの見解が提示された。これに対して、反腐敗闘争と経済改革の関連、習近平グループと李克強グループの差異に対する詳細、一帯一路構想やアジアインフラ投資銀行(AIIB)との関連等について、質疑応答が行われた。
午後のSession II(13時~15時)では、米中関係についての討論が行われた。中国の対外政策が力の行使を伴う積極的なものとなっていることを指摘し、またアメリカがこれに対して有効に対処できていないことが指摘された。アメリカが中国の拡大に対処するに十分な資源を投入せず、明確な意思を示していないことが東/東南アジア地域に不確実性を生んでいるということである。他方で、アメリカの中国に対する対決姿勢を強調する見解も表明され、航行の自由作戦実施、新鋭装備のアジア配備、同盟国・友好国との軍事協力強化といった施策がとられていることに注意が促された。そして米中両国が自国サイドに協力するよう中小国に圧力をかける行動をとっており、米中関係はより対決的なものになるであろうとの見通しが示された。質疑応答では、中小国の米中対立構造での役割、中国外交政策の変化の要因、日本の対応、米中軍事能力の比較など、多岐にわたって議論が行われた。とりわけ、アメリカ政府が中国への対応に十分な資源を投入しないのはなぜか、という点については、ホワイトハウスと国防省、国務省の対応の格差、環境問題や経済問題での米中協力の必要性等が指摘された。
最後のSession III(15時20分~18時)では、中韓関係と日中関係の現状と展望について、報告が行われた。まず中韓関係については、最近の北朝鮮核問題と終末高高度防衛ミサイル(THAAD)配備問題を題材に、中韓関係が構造的な冷却期に入ったとの見通しが示された。報告では、中韓関係の悪化は、中韓両国の希望的観測に原因があったという点が指摘された。すなわち、韓国は中国が北朝鮮を見限って韓国主導の朝鮮半島統一を容認すると考え、他方で中国は米中関係で韓国が中立的立場をとると期待するという、それぞれ過大な期待を抱いていたというのである。この観測が願望に基づくものであったことを明らかにしたのが、北朝鮮危機とTHAAD問題であった。韓国にとって北朝鮮への対抗措置に消極的な中国の立場は容認できず、中国にとって自国の安全保障に影響を与えるTHAAD配備は許容できなかった。現在の中韓関係の悪化は、このような安全保障と主権に関する構造的な問題であり、容易に解決し得ないと指摘された。質疑応答では、朴槿恵政権の対中急接近が中国に韓国への過大な期待を抱かせたのではないか、韓国のTHAAD反対派の対案は何か、中国は北朝鮮の核をどのように見ているのか、といった点が議論された。また、今回の中韓関係冷却化を受けて韓国では与野党の溝が埋まり、中国に対する安全保障政策では、共通の基盤で政策を議論できる状況になったということが指摘された。
日中関係については、世論調査を基礎とした現状の分析と見通しが提示された。日中両国の世論調査では、互いにマイナス・イメージが共有されていること、またそのイメージ悪化の原因が、共に領土問題という主権に関するものであるという点で、相似形を成しており、日中関係の改善は容易に見通せないことが指摘された。また、日本の対中投資が急減していること、また中国に進出する日本企業は、長期的な投資を目的とする製造業から、中国の市場に魅力に惹かれた短期的な利益回収を目指す業種へと転換していることに、注意が喚起された。質疑応答では、日中両国の認識と情報のギャップ、尖閣問題への日本の対応、武力衝突の可能性に対する日中の意識の違い、日中間の連絡メカニズム交渉の現状といった点について、議論が行われた。