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SSUフォーラム: ケント・カルダー教授

日時: 2013年11月27日(木)13:00-14:30
題目: “The New Continentalism: Energy and Twenty-First Century Eurasian Geopolitics”
(「新大陸主義: エネルギーと21世紀のユーラシア地政学」)
講演者: ケント・カルダー教授(ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院(SAIS)エドウィン・O・ライシャワー東アジア研究所所長)
言語: 英語

第2回SSUフォーラムは、ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院(SAIS)のエドウィン・O・ライシャワー東アジア研究所所長であるケント・カルダー教授を講師に迎え、教授の最新の著作であるThe New Continentalism: Energy and Twenty-First Century Eurasian Geopolitics(邦題:『新大陸主義:21世紀のエネルギーパワーゲーム』潮出版社、2013年)を題材に講演を行っていただいた。彼の提唱する「新大陸主義」は、現在の東アジアにおける動きを促進するものであり、知的な分析枠組みを提供するものである。

初めに飯田敬輔教授が、カルダー教授について紹介し、政策ビジョン研究センターへの来訪を歓迎した。

カルダー教授からは、まず、ユーラシア大陸において観察される一連の政治的、経済的な動向について言及があった。これは、特にアジアの広範囲に渡る急速な変質、大陸の連携を形作る数多くの輸送インフラの構築や、一貫して行われている政治的結びつきの発展などを特徴とするものである。これらの動きは、アジアの歴史的な枠組みと関連している。教授は、アジアの変質をもたらした重要な出来事として、1978年以降の中国の経済改革、1991年のインドの経済の自由化、そして1979年のイラン革命、1991年のソ連の崩壊を例に挙げた。

このユーラシア政治の分析は、観察される事実の増加によっても支持されている。急速に増加する国境を越えたパイプラインや高速鉄道のプロジェクトだけでなく、外交的な側面においても過去に類をみないような活力が観察される。中国の習近平は、すでに二回ロシアを訪問して大統領と会談しており、中央アジアの旧ソビエト諸国との連携を進める戦略を取っているようである。また、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、現在の第3任期において、外交政策の焦点を決定的に東アジアにシフトさせている。韓国政府もアジア諸国との外交的、経済的結びつきを強めることに強い関心を有していることがうかがえる。

カルダー教授は、現在見られるユーラシアにおける地域主義の特性は、ヨーロッパ連合において歴史的に見られたものとは異なり、結びつきが弱く、不安定なものであると述べる。それにも関わらず、カルダー教授は、「大陸が影響を与える」というマッキンダーの古典的な地政学的観念を前提とし、異なる国家の状況だけでなく、国内や地域の政治・経済主体の多様性について分析している。教授は、現在大陸で起こりつつある動向について、異なる経済間における相互補完をその重要な推進要素と捉えている。このような新しい文脈においては、イランの重要性が今一度強調される必要がある。また、これまであまり重視されてこなかった、ミャンマー、インド、バングラディッシュ、ヴェトナムなどの国々の地政学的重要性が増すことになるだろう。

ユーラシアの変質は日本にとっても明らかであるが、それは部分的であるとカルダー教授は述べる。安倍晋三政権は、起こりつつある新大陸主義との関連でロシアとの対話を増やしているが、日本は「違う場所」にいるようである。日本のすべての分野における外交政策担当者にとって、ユーラシア大陸における現状が変更しつつあるという状況の意味を捉え、それに対処することが必要であると述べた。