過日行われました、安全保障研究ユニット(SSU)主催の国際ワークショップ「東アジア国際紛争の打開に向けて」(2014年1月31日−2月1日)に際しまして、岸田文雄外務大臣のご来臨を賜りました。岸田外務大臣は、これまでも日本外交が大いに尽力してきた核軍縮・不拡散に向けた取組みについて、国際社会全体によるアプローチの重要性を強調されました。以下の外相スピーチは、外務省による寛大なご承諾を得て、当ユニットがウェブ公開させていただく運びになりました。
国際ワークショップ「東アジア国際紛争の打開に向けて」レセプション 岸田大臣挨拶
本日は国際ワークショップ「東アジア国際紛争の打開に向けて」の開催、心からお喜びを申し上げます。このワークショップは、東京大学が主催され、国内外の第一線で活躍されている有識者の皆様方が参加をされ、軍備管理・軍縮、不拡散、あるいは東アジアの平和と安定について議論をされたとお伺いをしております。
今日私がここに来させて頂きましたのは、パネリストの藤原帰一先生に声をかけて頂いたことによりますが、藤原先生のほうから、是非この機会に日本政府の、そして私自身の核軍縮、そして不拡散について考えを述べよというご依頼を頂いております。と言いますのも、私、先程藤原先生にもご紹介頂きましたように、広島の出身でありまして、外務大臣としての課題の中で、特に核軍縮・不拡散について強い思いを持って取り組んでおり、平素から藤原先生に様々な御示唆を頂いている次第です。
先日、長崎大学で私は講演を行い、核軍縮・不拡散についての包括的な考え方について講演をさせて頂きました。その概要を少し紹介させて頂きまして、私の考えの披露に代えさせて頂きたいと思います。
長崎での講演におきましては、まず核兵器が使用された際の非人道性に対する正確な認識、そして併せて、国際社会が多様化する核リスクに直面していることへの冷静な認識、この2つの認識に基づいて、現実的そして実践的な取組を行っていく、こうした基本的な考え方に我が国は立っている、こうしたことをまず申し上げさせて頂きました。そしてそのためには、核不拡散のために「3つの阻止」という考え方、そして核軍縮のために「3つの低減」という考え方が必要であるということを申し上げさせて頂きました。
核不拡散についての「3つの阻止」という考え方ですが、まず一つは、北朝鮮の核・ミサイル開発、あるいはイランの核問題に対応していく、さらにはIAEAの保障措置を強化していく等の取組をしていまして、「新たな核兵器国の出現を阻止する」ということが第一の阻止です。そして二つ目の阻止としまして、輸出管理を通じまして「核開発に寄与し得る物資、あるいは技術の拡散の阻止」を挙げ、そして三つ目の阻止として、核セキュリティの強化による「核テロの阻止」、こうしたものを挙げさせて頂きました。この「3つの阻止」が重要であるという考え方を述べました。
そして、核軍縮の「3つの低減」ということにつきましては、まず一つ目としまして、核軍縮交渉の多国間化、さらには核戦力の透明性の向上、こうしたものを通じて「核兵器の数を低減する」ということ。そして二つ目としまして、各国の安全保障政策、あるいは軍事ドクトリンにおいて核兵器の役割を絞り込む、こうしたことによって「核兵器の役割を低減させる」ということ。そして三つ目としまして、地域の信頼醸成等を通じまして、「核兵器を保有するそもそもの動機自体を低減させていく」ということ、この「3つの低減」が重要であるということを申し上げさせて頂きました。
そして、それに加えまして、核兵器の非人道性に関する議論を進めていく、こうしたことの重要性に触れさせて頂きました。こうした核兵器の非人道性に関する議論が、「核兵器のない世界」に向けて、国際社会を結束させる触媒になるということ。さらには、こうした核兵器の非人道性に関する認識を世代や国境を越えて広げていかなければならないということ。そして、こうした核兵器の非人道性について科学的側面について知見を深めていくということ、こうしたことが重要である、と言うことを申し上げました。こうした議論を深めることによって、「核兵器のない世界」に向けた大きな一歩に繋がることのではないか、こういった考え方を申し上げさせて頂きました。
以上が、先日私が長崎で講演させて頂いたものの概要・骨子でございますが、今年は我が国におきまして、4月にNPDIの外相会合が予定されています。こうした様々な機会を通じまして、軍縮不拡散につきましても議論を深めていきたいと考えておりますし、私のこうした考え方も、こうした議論に供させて頂ければと考えております。今日御列席の皆様方にもまた貴重なご指導を頂ければ幸いです。
それでは、ワークショップの議論が大いに盛り上がりますことを心から御祈念申し上げて、今日お集まりの皆様方のそれぞれのご活躍をお祈り申し上げて杯を上げたいと存じます。ありがとうございました。