7th Korea-Japan Dialogue on East Asian Security 2018
日時: | 2018年11月10日(土) |
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場所: | ソウル大学 アジア研究センター 306会議室 |
主題: | 7th Korea-Japan Dialogue on East Asian Security 2018 |
言語: | 英語 |
共催: |
ソウル大学米中関係研究センター 東京大学政策ビジョン研究センター安全保障研究ユニット(SSU) |
Saturday, November 10, 2018 – Half-day Seminar
Welcome Remarks and Opening Remarks 14:30-14:45
Welcome Remarks: Jae Ho CHUNG (Seoul National University)
Opening Remarks: Akio TAKAHARA (The University of Tokyo)
Session 1 14:45-16:00 on US-China Relations and Northeast Asia
Moderator: Jae Ho CHUNG (Seoul National University)
Presenters: Hankwon KIM (Korean National Diplomatic Academy)
Toshiya TSUGAMI (Japan Institute of International Affairs)
Coffee Break 16:00-16:15
Session 2 16:15-18:00 on Assessing Korea-China and Japan China Relations
Moderator: Akio TAKAHARA (The University of Tokyo)
Presenters: Jaecheol KIM (Catholic University)
Kazuko Kojima (Keio University)
Closing Remarks 18:00-18:10
Jae Ho CHUNG (Seoul National University)
Akio TAKAHARA (The University of Tokyo)
Dinner 19:00
Report on the 7th Korea-Japan Dialogue on East Asian Security 2018
2018年11月10日、日本側参加者は早朝の便で羽田を発ちソウル大学に午後1時に到着した。そして午後2時半からソウル大学アジア研究センターで東アジアの安全保障に関する日韓対話を行った。
第一セッションでは、米中関係と東北アジアをテーマに、まず韓国国立外交学院のHan Kwon KIM教授が報告を行った。中国の台頭により米中関係が過渡期に入っており、習近平が積極的な(「奮発有為」)対外政策を展開している一方で、米国の政策がオバマ政権のリバランシングとTPPからトランプ政権のインド太平洋戦略と経済貿易交渉に移ったことが紹介された。さらに、北朝鮮の非核化、中朝の戦略的提携、日本と中国の協力、そして台湾問題などが分析の俎上に載せられた。いずれの問題についても、米中が長期的な戦略的競争関係に入ったことと関わるが、短期的には中国が譲歩し、「韜光養晦2.0」と呼べるような協調姿勢に転じるほかはないという見解が示された。
続いて日本国際問題研究所客員研究員の津上俊哉氏が報告した。米国が中国に厳しく当たるようになった原因についての分析に続き、厳しい姿勢をとることについてはコンセンサスがあるものの、中国の何を問題視して、どのような対応を求めているかについては政権内で立場が「覇権維持派」、「自由貿易派」と「反貿易派」に分かれていることが紹介された。そして中国には80年代の日本と同様、キャッチアップを目指す意識が働いており、それが米国の反中意識を掻き立てているという仮説の提示に続き、米国が自由貿易秩序を崩す行為に及んでいることへの懸念が示され、日本がその維持のために米中それぞれに働きかけるべきだとする見解が示された。
これらの報告に続き、多くの質問や意見が投げかけられた。例えば中国の対外政策が「新型国際関係」や「人類運命共同体」などの実現を提起していることの目的や効果について問われ、それにより国内政治上、国際地位の向上を国民に示す内政上の効果が期待されているとの理解が示された。また、米中関係が悪化した場合、韓国は難しい立場に立たされるが日本はどうか、さらに誰がトランプ大統領に自由な国際秩序の維持を働きかけるのかといった問いに対しては、日本は同意できない点を指摘し、かつ米国内の賛同者に働きかけるべきだという意見が述べられた。
第二セッションのテーマは韓中関係と日中関係であり、まず韓国カトリック大学のJae Cheol KIM教授が韓中関係について報告した。韓中関係は2016年の週末高高度防衛ミサイル(THAAD)の韓国配備決定とそれに対する中国の対韓経済制裁をきっかけに悪化したが、2017年末の文在寅大統領の訪中以来、次第に商業関係は回復しており、防衛当局間の対話も復活した。しかし排他的経済水域の区分は未決であり、韓国の防空識別圏への中国空軍機の侵入が新たな問題となっているほか、9月には韓国海軍艦艇が西沙諸島から12海里内の水域を航海して中国から抗議を受けた。そして相互の国民感情は回復せず、北朝鮮核問題を巡る立場の相違が摩擦の中心にある、韓国と米国が主導する早急な非核化により影響力を低下させることを中国は恐れている、という見解が示された。
次に、小嶋華津子慶応大学准教授が日中関係をテーマに報告した。安倍晋三総理の中国公式訪問は経済界に大きな期待をもたらしているものの、1990年代から二国間関係を不安定化させてきた基本構造に変化はなく、また行動規範をめぐる日中の意見の不一致も大きい。すなわち、反ソという共通戦略目標を失ったこと、中国が市場化を進めるにつれ、国際秩序と中国の間を橋渡しする日本の役割が不要になっていったこと、社会主義イデオロギーの有効性が減少したため中国共産党が「愛国主義」を強調し政権の求心力として活用し始めたことなどは、今日も続いていることが指摘された。また知的財産権や海外投資のやり方、サイバー空間における個人データの保護の問題などでも日中の規範と行動様式は一致していない。そして日本やその他のミドルパワー諸国は、米中の権力政治から主権や利益、価値体系を守るために二国間および多国間で制度構築を進めるべきだという見解が示された。
これらの報告に対しても多くの質問や意見が提示された。経済的に中国は韓国を必要としていないという意見に対しては、韓国はサプライチェーンの一翼を担っており中国もその事実を重視せざるをえない、だが中国は技術力を向上させており、中韓が競合する部門が増えたことなどが指摘された。台湾、尖閣諸島、朝鮮半島、さらには自由で開かれたインド太平洋戦略をめぐっても活発な意見交換が行われ、米中対立により日本外交が自主性を発揮する余地が拡大していることや、文在寅政権の中枢は北朝鮮の安全保障の観点からすれば核開発はリーズナブルだと考えていることなど、興味深い指摘が行われた。
韓国側の他の出席者は、Jae Ho CHUNGソウル大学教授、そしてBeomchul SHINアサン研究所研究員であった。