リスクカフェ
第2回 地震・津波リスク 専門家フォーラム報告

原子力発電所に影響を及ぼす断層とそれによる揺れ・変位はどう推定されているのか?

東京大学政策ビジョン研究センター 社会的合意形成支援研究ユニット

詳細版記録(438KB)

日時:平成25年12月21日(土) 13時〜17時
場所:東京大学農学部キャンパス ファカルティハウス セミナールーム

話題提供① 原子力施設に対する地震動評価の方法とその不確実性

地震動評価は、まずプレート境界地震や活断層地震など、原子力施設に影響を及ぼしそうな地震を選定することから始まる。検討用地震について、震源における破壊の規模、伝播の経路、施設の地盤の特性でどのように影響を受けるかを、比較的単純なモデルで推定する。過去の地震から、破壊の方向や地盤の影響が地震動を左右することが分かってきた。ただし、これらの影響の事前予測は困難で、ばらつきを考慮する必要がある。また、震源を特定せず策定する地震動の根拠となるデータが蓄積されるにつれ、どう評価に用いるかが課題になっている。

話題提供② 断層認定の方法とその不確実性

活断層の認定は、地震災害に関して重要な科学であるが、原子力施設で問題になっている断層は不明瞭で判断の分かれるものがほとんどである。破砕帯は地下数キロから数十キロで形成され、それが隆起してきたもので、隆起させる地殻変動は考えられるが、地殻の断層の動きによって動くかどうかは分からない。こういった不確実性が原子力規制委員会では「否定できない可能性」として扱われているが、2010年までは、断層や破砕帯の変位の程度を、不確実性を考慮して最も厳しい状況で検証するなど、科学的な知見を踏まえた取り組みが行われていた。

専門家フォーラムメンバー間の議論の概要

  • 活断層の情報から震源断層を知ることは可能か? ⇒ 無理、微小地震などで推測しかない
  • 断層が連動しても地震動はそれほど大きくならない ⇒ 断層の長さと地震の規模の関係はまだ議論されている段階
  • 活断層はなぜ繰り返し動くのか? ⇒ 地震学には説明するモデルがない
  • 変位の予測をする際には、その確からしさもいっしょに議論すべきではないか?
  • 地震が起きて新たな知見が得られる ⇒ 見落としはありうる、すべての現象を説明できていない ⇒ 不確実性を小さくする努力とともに、工学的対応の考慮も必要

全体討議の概要

  • 判断のルールは誰がどのように決めたのか?
  • 専門家はどのように関わるべきか? ⇒ 特定の専門分野では限界あり、総合的な取り組みと限界を踏まえた貢献を
  • 社会にどう伝えるべきか? ⇒ リスクによる判断をしてほしい、科学の不確実性を理解してほしい
  • 不確実性や確率をどう伝えるか(専門家の価値判断をどう区別できるか?)