リスクカフェ
第3回 地震・津波リスク 専門家フォーラム報告

原子力発電所に影響を及ぼす地震と津波はどう想定され、対緒策は想定され、対策はどこまでされているのか?

東京大学政策ビジョン研究センター 社会的合意形成支援研究ユニット

詳細版記録(456KB)

日時:平成26年2月22日(土) 13時〜17時
場所:東京大学農学部キャンパス ファカルティハウス セミナールーム

話題提供① 東日本大震災をもたらした地震と津波はどのように発生したのか

プレート境界型地震のうち、普段固着して動かない部分(アスペリティ)が動くことで繰り返し地震を説明できていた。貞観地震はアスペリティで説明できない地震として知られており、津波堆積物から数百年単位で繰り返していることが分かっていた。しかし、貞観地震のモデルから推定された地震の規模はM8.4以上、津波の高さは5〜6mだった。東日本大震災では、長大な断層が大きく動いたことで広域に津波被災が発生した。これらを予見できなかった原因は、100年分のデータしかなかったという情報不足、東北日本は世界で一番詳しく調べられているという慢心、これまでの常識からの思い込み。地震学的手法による予測には不確実性がある。

話題提供② 地震・津波現象の不確実性と原子力施設の対策〜耐津波設計を考える〜

福島事故の教訓は、設備面の対策とともに、想定外の事態になったときのアクシデントマネジメント、それを行う人間が重要であるということである。今後の自然災害への取り組みでは、リスク概念を徹底し、科学的想像力をもち、必要な行動は迅速に行うことが必要。仏の原発で電源喪失事故があり、スマトラ津波でインドの原発が浸水したにもかかわらず、福島第一の浸水リスクはかなり高いことが分かっていたにもかかわらず、対策が間に合わなかった。科学者・技術者はリスク情報を提供するだけでなく、事業者が行動を起こすよう促す努力が求められる。

専門家フォーラムメンバー間の議論の概要

  • 最大規模の目安は? ⇒ どこまでの時間を考えるかに依存
  • 地震や津波の予測は可能か? ⇒ 断層がどう破壊するかに依存、破壊の仕方は予測不能
  • 思い込みと新知見の扱いは? ⇒ 仮説を正しいと思いこまない意識が必要、学会で統一見解を出すことは難しい、学術会議のユニークボイスには疑問

全体討議の概要

  • 社会にどう伝えるか? ⇒ 伝え手の意図の問題、分かりやすくすることの弊害
  • 科学的知見やリスク情報は意思決定に使われているか? ⇒ “見たくないものを見ない”姿勢、誰が採否を判断するのか?、外圧は機能するか?、インセンティブ方式は可能か?
  • リスクをどう扱っていくのか? ⇒ 多様な意見、価値をどう扱うか?