リスクカフェ
第4回 地震・津波リスク 専門家フォーラム報告
リスク論はどう使えるのか?
日時:平成26年7月5日(土)13時〜16時30分
場所:東京大学農学部キャンパス ファカルティハウス セミナールーム
話題提供① 原子力発電所の耐震設計
1981年の「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」は、原子炉施設を設計し建設するために、当時の設計や耐震技術を踏まえ、地震に関する不確実性も考慮して策定された。重要なことは、当時の知見は十分反映されているものの、今後も見直し絶えず研究開発を行い、安全性の向上に努力すべきと明記され、必ず見直すこととされていた点である。しかしながら、1981年の指針は断層や地震のことがよく分かっていない場合でも設計ができるなど、非常に使い勝手が良かったために、長く見直されることがなかった。2006年に耐震設計審査指針が改訂され、20年間に進んだ研究の成果や最新の知見が取り入れられた。改訂で重要だったのは、不確かさを考慮する「残余のリスク」という概念が取り入れられたことであるが、残念ながら残余のリスクを評価する前に福島事故が起きてしまった。現行の規制基準における耐震設計には、リスクや不確かさの考慮が含まれていない点が問題ではないか。また、安全が強調されるものの、どこまでの安全を求めるのかという目標が十分議論されていない。
<議論>
安全設計の目標と考え方、見直しはなぜ行われなかったのか、基準と要求性能、新たな知見の取り入れ方、安全裕度とは、などについて議論が行われました。
話題提供② リスク概念の重要性
現行の規制基準には、確率論を用いたリスク評価は取り入れられていない。表向きの理由は評価方法が制術していないということであるが、米国ではかなり前から実施されているし、国内でも研究や評価の試行が行われている。決定論は分かり易いし、設計もしやすいが、想定外をなくすために過大な設計が要求されることにになってしまう。不確かさを取り入れた考えを、事業者・規制機関・学会・国民の間でコミュニケーションすることが必要ではないか。
<議論>
安全裕度の評価方法について議論があったのち、決定論と確率論の役割、2つを融合できないか、リスク評価の対象を何にすべきかなどの議論が行われました。
総合討論の概要
- リスクで考えるとは? ⇒ ベネフィットがあるからこそどこまで耐えられるかの議論が可能
- 安全目標の意味 ⇒ 海外で定めているのは、リスク低減コストとの比較で耐えられる領域
- リスクを評価し議論できない日本社会 ⇒ 震災以降は特にそういう雰囲気だが、努力していないだけでは?
- 誰がどのような場で議論すべきか?
- 専門家と学会の役割
- 専門家間の議論を成立させるには
- リスク論はどう使えるか ⇒ リスク評価に対する信頼性が問題
- リスク論の理解と信頼性向上 ⇒ 結果よりも評価のプロセスや仮定を明らかにすべき!
- 専門家の条件 ⇒ 誰が議論に参加すべきか
最後に米国原子力規制委員会が「地震評価の不確実性と専門家の活用」に関するガイドラインを示しているとの情報が出され、次回、リスクと専門家の役割についてもう一度議論することにしました。