国際ワークショップ:東アジア国際紛争の打開に向けて
日時: | 2014年2月1日(土) |
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場所: | 品川プリンスホテル12階、シルバー会場 |
主催: | 東京大学政策ビジョン研究センター安全保障研究ユニット |
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この度、政策ビジョンセンター安全保障ユニットは、東アジア地域における国際紛争の打開をテーマに、国際ワークショップを主催した。この国際ワークショップでは、四つのクローズドセッションと共にパブリックセッションが行われ、東アジアにおける地域的な安全保障について、優れた専門家により活発な意見交換が行われた。この国際ワークショップには、日本、中国、韓国、オーストラリア、アメリカ合衆国、ヨーロッパから上級外交官及び著名な研究者が参加した。また、岸田文雄外務大臣からゲストへの歓迎のスピーチをいただいた。
国際ワークショップでは、東アジアの国際政治及び安全保障について、 (1)現在進行しているパワーシフト(権力移行)とそれによりもたらされる結果、(2)歴史の記憶の問題と、その問題が現代の政治交渉に与えるインパクト、(3)核兵器、軍備管理、軍縮の問題、そして、(4) 法に基づく既存の国際制度及び国際機構を用いて、どのように東アジア地域の信頼醸成を図っていくことができるか、という四つのテーマが取り上げられた。それぞれのテーマについて、以下のセッションが設けられた。
セッション1:危機を解釈する:安全保障のジレンマと権力移行
セッション2:過去と現在:戦争の記憶と領土問題
セッション3:核不拡散と軍備管理の将来
セッション4:平和構築への提言
また、国際政治について現在行われている議論を広く発信していくことは安全保障ユニットの役割であるという観点から、国際ワークショップでは東アジアの危機をテーマに公開セッションも行われた。公開セッションでは、藤原帰一教授(東京大学、安全保障ユニット)、朱教授(北京大学)、Gareth Evans教授(オーストラリア国立大学)、G. John Ikenberry教授(プリンストン大学)により、東アジア地域の国際環境をより安全なものするため、現状と将来的な方向性について議論が行われた。
国際ワークショップでは主に、現在問題となっている三つの懸念事項について議論が集中した。 第一が、北朝鮮の安全保障問題である。これまでに何回も参加者から指摘されたこの問題は、現在でもなお東アジア地域における重要な不安定要素の一つとなっている。同時に、この問題は既に相互の信頼関係の構築が困難な外交状況をさらに悪化させている。実際、朝鮮半島の安定は韓国にとって死活問題であるだけでなく、中韓関係、日中関係、米中関係にも影響を及ぼすものである。地域の安全保障を考える上で、北朝鮮の軍事的脅威は、殊に核安全保障及び軍備管理といった重要課題において、対話を進展させる妨げとなっている。
第二が、継続的に再燃する東アジアにおける国家間の関係悪化に関する問題である。これは、地政学的な緊張関係という問題であると同時に、各国の政治指導者が直面する国内の(ナショナリスティックな)反発が生み出す問題でもある。特に、和解に向けた動きが進むようになると、歴史的な競争国/敵対国と見なされるようになっていくのである。殊に戦争の記憶や領土をめぐる問題においては、その傾向が顕著である。このように制約された外交環境のもとでは、政治指導者が会談することが個人レベルでさえ困難になるため、結果的に交渉の成功や二国間関係の改善のための基礎となる相互信頼を築くことが難しくなっていると指摘された。
そして最後の論点は、東アジア地域における権力移行やパワーシフトの問題である。この問題は、多くの研究者や外交関係者によって取り上げられた。東アジアにおける一つの核として台頭しつつある中国の存在は、リスクであると同時に機会ともなっている。ある分析によれば、中国はリベラルな国際秩序から利益を享受しているように見えるものの、これまで秩序を維持するという観点からは貢献してこなかった。中国は、既存のリベラルな秩序のルールや制度に則った形でグローバルガバナンスへ直接的関与を深めるべきである。その際、中国は自国の成長のみにとらわれず、国際的な評価の改善にも関心を払うべきである。一方で、中国は大国としての地位を得たものの、比較的短期間で急速に国家が変容を遂げたため、この変容をコントロールするために必要な政治文化的な変化は遅れをとっているのではないか、中国はまだ現時点では自国に対する認識や将来的な方向性が確立されていないのではないか、という点も指摘された。
今回の国際ワークショップでは、このような参加者の有意義な議論をもとに、数々のリスクに特徴付けられる東アジアの国際情勢を描き出すことができた。そして参加者は、国家指導部の間における信頼関係の再構築に向けた努力の必要性が何よりも重要であるということを確認した。