開催報告
国際シンポジウム『ミャンマーにおけるエネルギー政策の発展—現状、展望と政策提言』

チュラロンコン大学エネルギー研究所 客員研究員
山口 健介

2015/2/24

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【日時】 2015年2月6日(金) 9:30-17:00
【場所】 Pinya Hall, Grand Amara Hotel(ネピドー、ミャンマー)
【主催】 [日本]
経済産業省 (Ministry of Economy, Trade and Industry, METI)
東京大学政策ビジョン研究センター (UTokyo Policy Alternatives Research Institute, PARI)
海外産業人材育成協会 (The Overseas Human Resources and Industry Development Association, HIDA)
[ミャンマー]
国家エネルギー管理委員会 (National Energy Management Committee, NEMC)
エネルギー省 (Ministry of Energy, MOE)
【後援】 東アジア・アセアン経済研究センター (Economic Research Institute for ASEAN and East Asia, ERIA)

はじめに:問題意識など

天然ガスの輸出で外貨の多くを稼いでいるミャンマーが、国内ではエネルギー貧困に苦しんでいる。人口ベースで電化率はほぼ30%程度だとされている。JETROの調査によれば、ミャンマーへの投資を検討する際にもっとも大きな懸念の一つが電力供給である。このように、ミャンマーにおいてはエネルギー政策が最も重要な政策分野であり、とりわけエネルギー・アクセスの改善や地方の電化はテインセイン政権にとって喫緊の課題であるといっても過言ではない。

それではこの課題にどのように対応するのか。課題は明確であるがその答えはそれほど明快ではない。制約が多いからである。例えば、エネルギー政策分野でも政策企画立案のための信頼できるデータや統計が乏しい。また、政策の企画立案・実施のための法的な枠組みも未整備である。もっとも、行政は着実に進展していることも事実である。昨年4月約30年ぶりの国勢調査が行なわれ、一部人口統計等については速報値も発表されている。電気事業法の改正や地方電化に特化した新法の検討も進んでいるようだ。また、ミャンマーに対する関心が高まるにつれて、国際機関等による関連協力も多方面から本格化してきた。

こうした背景を踏まえて、東京大学政策ビジョン研究センター(UTokyo Policy Alternatives Research Institute, PARI)はERIAからの支援を得て、ミャンマーの地方電化について研究を行なってきた。この研究の過程で、一昨年秋PARIはミャンマーエネルギー省から人材育成(Human Resources Development, HRD)に関する要請を受けた1。民政移管後、HRDこそは改善が最も懸念される分野の1つであり、中央のエネルギー関係省庁のみならず、関係する研究機関やNGO、地方政府も含めた幅広い人材が対象となるべきである。幅広い人材を対象として、昨年9月以来、「エネルギー政策ワークショップ」として、ミャンマーのエネルギー関係9省庁や関係組織から選ばれた約50名の中堅幹部に対し、エネルギー政策に関する10のテーマをミャンマー政府とともに選定し、このテーマについて東京大学を中心とする専門家による講義・研修を実施した。このワークショップはそのタイトルからも明らかなように、通常の「研修」とは異なり、具体的な政策テーマに関して、研修生と我々専門家とでともに現状を分析し、考え、議論して、最終的にはミャンマー政府に対して実際に政策提案を行なうことを企図している点に特色がある。

本ワークショップの特色は、これに留まらない。省庁の壁を超えたところに小さくない意義がある。ミャンマーのエネルギー政策は、エネルギー省や電力省など9つの省庁が政策企画立案に携わっており、エネルギー政策を統合的に方向付けるための組織・制度が十分ではない。このような問題意識から、国家エネルギー管理委員会(National Energy Management Committee, NEMC)が新設され(2013年1月)、統合的なエネルギー管理の取り組みは緒に就いたばかりである(表1)。こうした現状で、組織の壁を越えてともに考え議論すること自体、エネルギー政策統合化の観点から意義深い試みとして位置づけられよう。

表1 国家エネルギー管理委員会(NEMC)の構成

委員備考
副大統領議長
エネルギー大臣事務局長
電力大臣副事務局長
農業・灌漑大臣
環境保全・森林大臣
工業大臣
鉱業大臣
国家計画・経済開発大臣
科学・技術大臣
家畜・漁業・地方開発大臣
Dr Myint Soe鉱業省地質鉱物探査局:地質学者
U Win Khaingミャンマー・エンジニアリング協会:会長
U Aung Myint新エネルギー協会:事務局長
エネルギー副大臣共同事務局
エネルギー開発副大臣共同事務局

出典:2013年1月9日大統領令等より作成

今回の国際シンポジウムは、いわばワークショップをいったん締めくくると同時に、あらためて世界の第一線で活躍するエネルギー専門家によるグローバルな視点からミャンマーの置かれた状況を確認し、政策提案の第一次案を発表してよりエネルギー専門家やミャンマー各省と議論する機会をえるものとして企画された。この政策提案は、先述のワークショップの10のテーマから重要性の高いものを5つ選定し、研修生も5つのグループに分かれてそれぞれ別のテーマを受け持って行なわれたものである。シンポジウムは午前と午後の2セッションで構成され、午前 の“エネルギー分野を含む世界におけるミャンマーをめぐる環境と動向(Global Environment and Trend Surrounding Myanmar Including its Energy Sector)” セッションでは、国際的なエネルギー政策の潮流を踏まえたうえでミャンマーがとるべき政策の「総論」について議論が深められた。

シンポジウム前半 集合写真

午後の“それぞれの課題についての政策提言ドラフトの発表(Presentations of Draft Policy Proposals on Specific Policy Issues )”セッションでは、エネルギー政策ワークショップを土台として、エネルギー政策の「各論」について研修生からが政策提言の一次案を発表した。これらは、省庁間など組織の壁を越えて横断的に協力し議論された提言であり、本年5‐6月ごろのNEMCへの最終提案を予定している。また、今回の国際シンポジウムは、ミャンマー側からエネルギー大臣をはじめエネルギー関係各省庁の副大臣を中心とする幹部や民間団体、日本側から渡辺秀央日本ミャンマー協会会長、経済産業省、HIDA、民間企業等から多くの参加者を得て開催された。

シンポジウム会場風景

セッション1:エネルギー分野を含む世界におけるミャンマーをめぐる環境と動向

Zay Yar Aungミャンマーエネルギー大臣

経済産業省(METI)貿易経済協力局吉田泰彦交渉官

海外産業人材育成協会(HIDA)武田貞生専務理事

まず、開会の辞が、Zay Yar Aungミャンマーエネルギー大臣、経済産業省(METI)貿易経済協力局吉田泰彦交渉官、海外産業人材育成協会(HIDA)武田貞生専務理事より述べられた。まずZay Yar Aung大臣は、2013年にHIDAが日本で開催した人材研修以来、こうした研修の重要性を確認したことを述べた。改めて、政策研修に関わってきた東京大学、METI、HIDAに対して謝意が述べられた。次に、吉田交渉官は、経済発展の土台としての基盤インフラの重要性と、そのための統合的政策の重要性を強調した。そうした統合的政策を立案するための一里塚として、政策研修及び本シンポジウムを位置付けたい旨を強調された。最後に、武田専務理事は、時宜を得たエネルギー政策研修について、その受講者及び東京大学の芳川教授に謝意を表した。

基調講演1

講演資料(田中伸男前IEA事務局長)

田中伸男前IEA事務局長

続けて、田中伸男東京大学公共政策大学院教授・前国際エネルギー機関(International Energy Agency, IEA)事務局長、及び S. K. Chouシンガポール国立大学教授・同エネルギー研究所長が基調講演を行った。田中教授は、“Challenges to the Energy Security in Asia”と題して、IEAによる“Energy Outlook 2014”に基づき2、世界のエネルギー事情の潮流とアジアにおけるエネルギー安全保障確保について講演を行った。世界のエネルギー供給システムにはリスクが満ち溢れ、今後もこの傾向は変わらない。例えば、石油は依然、ISISなど不安定な政治的課題を抱える中東に頼らざるを得ない。また、ウクライナとロシアの問題も解決の糸口が見えない。さらに、シェールガス技術の進歩で新たな供給源が見つかった一方で、潜在生産量の大きい中国がシェールガス生産に踏み切るかは未知数である。

田中教授によれば、このような不安定なエネルギー供給システムをふまえ、アジアがエネルギー安全保障を達成する1つの鍵はコネクティビティである。例えば、現在、ASEAN内では、エネルギーの出し手と受け手が明確に分かれているものの、地域全体でならしてみれば120%のエネルギー自給率3ということになる。すなわち、コネクティビティによるフローを増し、地域内のエネルギーを地域内で用いることで、政治的に不安要素を抱える中東への依存低減につながる。越境送電網などのハード・インフラに加え、エネルギー市場制度等のソフト・インフラを整備することで、集団的なエネルギー安全保障確保に資する。さらに、一層の安全保障確保のために、原子力も含めた非枯渇性資源の利用促進を通じたエネルギーミックスの多様化を図ることで、地球温暖化問題にも貢献し得る。

基調講演2

講演資料(S. K. Chouシンガポール国立大学教授、同エネルギー研究所長)

S. K. Chouシンガポール国立大学教授、同エネルギー研究所長

次にChou教授は、“Energy in ASEAN and Implications for Myanmar”と題して講演した。ASEAN経済共同体(ASEAN Economic Community, AEC)及び付随するエネルギー市場統合は、ミャンマーにおけるエネルギー利用及び開発にとってプラスに働く。AECが成熟し資本の動きがより自由になることで、エネルギー開発、市場開発、自由化などの分野に資本を誘致しやすくなると思われる。こうした、自由化の動きの阻害要因となりうる政府内の権益の追求行動(Rent-seeking behavior)4については、ASEAN各国政府および公社間で協力・協調して透明性を増すことで対処してゆくべきであろう。また、後発のミャンマーは先発各国の成功事例から学べる有利な立場にいるとも言える。とりわけ、省エネルギー分野などでは「一足飛び(リープフロッグ)5」の可能性も積極的に探りたい。

セッション2:それぞれの課題についての政策提言ドラフトの発表

東京大学政策ビジョン研究センター・公共政策大学院芳川恒志特任教授

冒頭、芳川教授が午後のセッションの開会の辞を述べた。Zay Yar Aung大臣が午前中に述べたように、このシンポジウムは政策研修の1つのマイルストーンであり、5−6月ごろに予定しているNEMCへの政策提言が最終的な目標であることを確認した。NEMCへの政策提言を見据えて、より有益な示唆をフロアから引き出すため、これまでのワークショップで強調されてきた5点の重要性を再確認した。その5点とは、1)エビデンス・ベース、2)3E(Energy, Environment, and Economy)、3)国際的なベスト・プラクティスからの示唆、4)マーケット・メカニズムに則った発想、5)時間軸を意識したロードマップ、である。

発表風景

グループ1  Energy Technology and Human Resource Development(エネルギー技術と人材育成)

グループ1 “Energy Technology and Human Resource Development(エネルギー技術と人材育成)”は、エネルギー管理士6に関する制度にフォーカスを当てて発表した。ミャンマー国の人材育成に関しては、現状ではエネルギー省、工業省に加えて科学技術省も行い、様々な研修が混在している。今後望まれる1つの方向性は、ミャンマー国内及びASEAN域内でのエネルギー管理士資格の標準化であり、日本及びASEAN各国の事例を発表した。この中で、JICAがこれまでタイを中心として支援してきている、エネルギー管理士資格との制度調和が提言された。また、こうした管理士制度の導入に際し、職業訓練校の整備が望まれる点が強調された。今後、交換留学性プログラムなども通じて、ASEAN域内でこうしたプログラムの調和が目指されることが重要であり、そこで我が国が求められる役割は小さくない。

上:発表風景
下:コメントしたミャンマー科学技術省役人など

グループ2 Electricity Policy in Myanmar(ミャンマーにおける電力政策)

第2グループ“Electricity Policy in Myanmar(ミャンマーにおける電力政策)”は、小・中水力の重要性について指摘した。ミャンマーはガス及び石炭のベース電源の設備増強が、需要の急増に追い付かないことが指摘されている。したがって、潜在能力の大きい水力発電を、調整電源として開発することが安定的エネルギー供給において喫緊の課題である。1,000MWを超える大型水力発電は、経済的には有利な一方で、環境配慮及びローカル・コミュニティとの関係性の観点から、容易には進められない状況である7。これは、ラオスのナムトゥン2(Nam Theun 2)ダムなどの先行事例からも推測される。したがって、取り急ぎ、利害関係者のウィン・ウィンの関係を作りつつ、100MW以下の中・小水力の開発を進めるのが現実的な方途となろう。これらへの、ファイナンシャル・スキームを構築し官民連携(Public Private Partnership, PPP)を推進することが、喫緊の課題である。

上:発表風景
下:コメントした東京大学政策ビジョン研究センター橋本信雄客員研究員、ERIA Venkatachalam Anbumozhi上席研究員

グループ3 Energy Efficiency Policy and Strategy for Myanmar(ミャンマーにおける省エネルギー政策と戦略)

第3グループ“Energy Efficiency Policy and Strategy for Myanmar(ミャンマーにおける省エネルギー政策と戦略)”は、産業セクターの省エネルギーに着目して発表した。とりわけセメント産業のキルン技術8に着目した。キルンはドライタイプとウェットタイプのものがあるが、ドライタイプはウェットタイプに比べてエネルギー効率が良い。現在、ミャンマーにあるプラントは全てウェットタイプ・キルンを使っており、ドライタイプに交換するだけで一定のエネルギー節約を達成できる。他方、交換に関するイニシャルコストなど「省エネルギーバリア(energy efficiency barrier)」も少なくない。さらに、こうしたハード・ソリューションに、エネルギー管理システム等のようなソフト・ソリューションを組み合わせることで、より効果的な省エネ対策となる。また、途上国の省エネについては、「公衆の意識啓発(Public Awareness)」プログラムを推進することが、社会啓発の観点で決定的に重要となることが指摘された。

上:発表風景
下:コメントしたミャンマー工業省役人、S. K. Chouシンガポール国立大学教授

グループ4 Energy Pricing, Subsidy and Energy Market (電力価格、補助金とエネルギー市場)

第4グループ“Energy Pricing, Subsidy and Energy Market (電力価格、補助金とエネルギー市場)”は、電力価格に着目して発表した。ミャンマーの電力政策における課題の一つは、急増する需要に比較して電力供給が追い付かないことにある。ここでは、電力設備投資が必要となるが、投資家に魅力的なプロジェクトが少ないのが現状である。この大きな要因が、安価な電力料金である。例えば、ASEANの他国と比較してもミャンマーの電力料金は低く抑えられている。そこで、電力料金の改定をしていくことが望まれるが、その改定スケジュールの目安として、世界銀行によるファンディング・ギャップ9分析(Funding-gap analysis)が紹介された。民生部門の多消費者に対しての、電力価格引き上げが提言された。引き上げに関するスケジュールなどは、今後IMFなどの提言なども踏まえ、科学的により妥当なものとしていくことが望まれる。

上:発表風景
下:コメントしたミャンマーエネルギー省役人、東京大学政策ビジョン研究センター杉山昌広講師

グループ5 Energy Access in Rural Area and Energy Poverty(地方でのエネルギー・アクセスとエネルギー貧困)

第5グループ“Energy Access in Rural Area and Energy Poverty(地方でのエネルギー・アクセスとエネルギー貧困)”は、電化戦略について発表した。ミャンマーは未だ30%未満の電化率で、エネルギー・アクセスの最も低い国の1つとなっている。現在、2030年に100%の電化達成を目標としており、世界銀行がグリッド延伸による電化プログラムを作成している。これらは、ASEANで成功事例がある。例えば、ベトナムでは、近年グリッド延伸により電化率が劇的に改善した。特に、1994年から1997年の3年で14%から61%に向上した。ただし、ミャンマーにおいては投資環境が異なる事もあり、同様の電化プログラムが成功するかは定かでない。同国の投資環境に併せて、活発な民間参入を促しうる電化プログラムが望まれる10。今後、ミニグリッドの活用も1つのオプションとして、ファイナンシャル・スキームを組み込んだ電化関連法制度を構築することが重要と思われる。

上:発表風景
下:コメントしたミャンマー家畜・漁業・地方開発省役人、KWR International Keith Rabin社長

発表を聞く、左から東京大学政策ビジョン研究センター杉山昌広講師、橋本信雄同センター客員研究員、ERIA Venkatachalam Anbumozhi上席研究員

他グループの発表を聞くミャンマー側発表者

おわりに:NEMCへの政策提言に向けて

各グループの発表後になされた、主な質問・コメントについてまとめると表2のとおりである。冒頭、芳川教授が示した5点、1)エビデンス・ベース、2)3E(Energy, Environment, and Economy)、3)国際的なベスト・プラクティスからの示唆、4)マーケット・メカニズムに則った発想、5)時間軸を意識したロードマップ、を踏まえ、国際・国内のエネルギー政策専門家から、有益なコメントや質問を導出することに成功したように思われる。

表2 グループごとの主な質疑応答

グループ1 Energy Technology and Human Resource Development(エネルギー技術と人材育成)
  • HRDプログラムを提案するに当たり、どのような統計データをどのような方法で収集するのか?(ミャンマー科学技術省)
  • HRDのターゲット分野。どのようなエネルギー技術が優先され、それに関わる人的資源が育てられるべきか?(田中前IEA事務局長)
  • アントレプレナーシップ(起業家精神)の重要性を踏まえるべき。こうした、アントレプレナー(起業家)を育てる事が新規技術の普及で重要。(Chouシンガポール大学教授)
  • 中学ぐらいから新エネ等エネルギー技術の専門家を育てるべき。専門家育成にあたり、ASEANの他国との協調も考えられる。(ミャンマーエンジニアリング協会、英語名Myanmar Engineering Society、略称MES)
  • ターゲットを明確にしてHRDプログラムのタイムフレームを示すことが重要。また、既存の職業訓練校の活用も重要な視点。(ERIA Anbumozhi上席研究員)
グループ2 Electricity Policy in Myanmar(ミャンマーにおける電力政策)
  • 中・小規模の発電施設に投資を集めることが喫緊の課題。以前、小・中水力は普及に躓いたが、どう乗り越えるか?(ミャンマー電力省)
  • 将来の電源ミックスについて議論が必要。(MES)
  • 水力発電のダムサイトでWin-winの関係性を作るのは難しい。(Anbumozhi上席研究員)
  • どのような電源ミックスに落ち着くにせよ、中・小水力は調整電源として普及が必須。今後は、関連統計データの整備がまず必要。(PARI橋本客員研究員)
グループ3 Energy Efficiency Policy and Strategy for Myanmar(ミャンマーにおける省エネルギー政策と戦略)
  • 日本のトップランナー制度等も参考になる。それ以外にも、国際的なベストプラクティスを集めることが重要。また、Public Awareness Programは省エネの裾野を広げる意味で重要。(ミャンマー工業省)
  • 日本のエネルギー管理士/監査制度も参考になる。(ミャンマー電力省)
  • 産業に依り、フォーカスされるべき技術も変わる。電熱併給などがフォーカスされるべき局面もある。(MES)
グループ4 Energy Pricing, Subsidy, and Energy Market(電力価格、補助金とエネルギー市場)
  • 電力料金の多寡については、未だ議論のあるところだろう。今後の改定スケジュールについては、慎重な検討が必要。(ミャンマー電力省)
  • IMFなどの分析についてもリファーすべき。最近のものであれば、インドネシアの経験が参考になるのではないか?(PARI杉山講師)
  • 省エネを進めるためにも、電力価格の引き上げは重要。こうした観点でもPublic Awareness Programが組まれるべき。(ミャンマー工業省)
グループ5 Energy Access in Rural Area and Energy Poverty(地方でのエネルギー・アクセスとエネルギー貧困)
  • オフグリッド電化は地方開発省の管轄。農村電化法案を作り、発電分野投資家へのインセンティブも明確にすべき。(ミャンマー家畜・漁業・地方開発省)
  • 特に地方部などでの、電力エンジニアのトレーニングが今後重要。(株式会社フジクラ 相沢氏)
  • 電化の定義が1つのポイントとなる。また、電化の優先順位の付け方やオフグリッド後の基幹送電線への組み込みも重要。(KWR Internationalキース社長)
  • バングラデシュなどでのマイクロファイナンス(貧困層を対象とした非伝統的な小口金融の仕組み)の成功事例は、ミャンマーで応用可能かもしれない。(ERIA Anbumozhi上席研究員)

左から田中伸男前IEA事務局長、経済産業省貿易経済協力局技術協力課折山光俊課長補佐

田中教授が改めて確認したように、今回の国際シンポジウムでは、「各省庁・組織の壁を超えて」行政官・関係者が協働したこと自体が、エネルギー政策統合化の観点から意義深かったと考えられる。本シンポジウムで一旦、政策ワークショップは節目を迎える。が、今回が終わりではない。NEMCへの最終政策提案プロセスの始まりである。芳川教授が最後に強調したように、今後、「他人から習う」から「自ら研鑽する」フェーズへと移行せねばならない。このフェーズを完遂することなくして、折山光俊課長補佐(METI)が実務的観点から指摘した、「民間参入のための投資環境整備」への実質的示唆は導出出来まい。統合的なエネルギー管理に向け、更なる研鑽が期待される。

閉会挨拶:東京大学政策ビジョン研究センター・公共政策大学院芳川恒志特任教授

集合写真

ミャンマー政府新聞に掲載された本シンポジウムのレポート

前日プレセミナーを行った会場から

写真撮影:東京大学政策ビジョン研究センター佐藤多歌子学術支援専門職員

脚注

  1. ミャンマー「エネルギー政策ワークショップ」を参照。
  2. 次のURLも参照。http://www.worldenergyoutlook.org/publications/weo-2014/
  3. 域内エネルギー総消費量に占める域内総生産量の割合。現状、エネルギー資源の輸出を行っており、中東等からのエネルギー輸入に一定程度依存している。
  4. 特にエネルギー資源開発におけるレントとは、その総収益から資源開発に必要な費用を差し引いて残る利潤。エネルギー資源開発のレントは小さくなく、利権も大きくなりがちである。この利権を追求した行動が、政府内で生じると言われる。
  5. 段階的なプロセスを踏まずに、一気に進展する変化の形態。有名な事例は、途上国における固定電話の普及を飛び越えた携帯電話の急速な普及。
  6. 日本においては、規定量以上のエネルギーを使用するエネルギー多消費産業の工場では、エネルギー管理者を置く必要がある。この業務にあたり、エネルギー管理士免状の交付を受けている者の選任が必要である。
  7. PARI-ERI共同ワークショップも参照。例えば、開催報告 第3回 PARI-ERI ジョイント・ワークショップ。その他、過去開催分の開催報告は国際エネルギー分析と政策研究ユニットページにあるリストを参照。
  8. 窯業で使用される窯技術。セメント産業では、原料である石灰石等がキルンに送りこまれ、クリンカが焼成される(焼成工程)。これを粉砕してセメントが作られる(仕上工程)。セメント製造におけるエネルギー消費は、大部分が焼成工程において利用される。
  9. 新規の設備投資に必要な資金と調達可能額との差。
  10. 関連する議論として、MLFRD共催ワークショップを参照。開催報告(詳細版) 政策ビジョン研究センター/ミャンマー家畜・漁業・地方開発省主催ワークショップ ミャンマー地方電化の現状と今後の政策

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