活力ある高齢化社会に向けた研究会

COCNフォーラム2010にて、森田センター長が中間提言についてのご報告をいたしました。
「科学技術の進化が創造する社会イノベーション」(2010/3/9実施)
「シルバーニューディール」でアクティブ・エイジング社会を目指す
プレゼンデータ(森田朗センター長)

東京大学政策ビジョン研究センターと産業競争力懇談会(代表幹事 勝俣恒久東京電力会長)は、東京大学の有する広範・多様な学術の知見と産業競争力懇談会会員企業の有するビジネスの知見を融合させ、来るべき高齢化社会に向けたイノベーションと内需振興についての研究会を発足させる。政策に関して、産学が協働する新たなアプローチを試みる。

東京大学では高齢社会総合研究機構等で包括的な研究が進められているが、喫緊の高齢社会の課題に対応するには、民間企業の活力を利用することは必要である。現在は必ずしも顕在化していないが健全な高齢化社会の実現に必要なあるいは望ましい製品、サービス、インフラ、社会システム等について検討を加え、その普及・定着に必要な道筋を明らかにしつつ、政策提案を行う。このことにより、「高齢者を標準とした新たな社会像の創出」に資することが目標である。

1. 背景

高齢化に伴う課題として常に医療及び年金に焦点が当たるが、多くの健常な高齢者が安心して明るく生きていくこと(「アクティブ・エイジング」)に関する課題については見逃されてきている。特に団塊世代が高齢者に仲間入りする時代が近づき、農村部に加えて都市部において大規模な高齢者集団が出現することを考慮すると、若者・中年を標準にした社会から、高齢者を標準にした社会への転換、すなわちソーシャルイノベーションが期待され、その中で新たな製品・サービスを投入する余地が広がると考えられる。社会的に関心の高い重点テーマの検討からスタートし、将来的には、「活力ある高齢化社会の実現に資する基本法」のような枠組みの提案を目指す。

2. 重点テーマ

第1段階として、活力ある高齢化社会を実現するために必要とされる製品・サービス等の性格に留意しつつ、技術開発、特区による実証、政府や地方公共団体の調達、制度的枠組みに関する課題の抽出とその実現方策について検討を深め、出口戦略を明らかにする。その際、考察の単位は、「都市・住宅」、「健康・医療情報」の二つの分野を中心として検討を進める。

1. 住宅・都市

日本の都市や住宅は、高齢者がアクチィブに活動できる環境を提供しているとはいえない。都市については、垂直移動(階段・・)の多い構造や、バリアフリーの不徹底(駅の中など一部のみバリアフリー化)など、住宅については、施設か自宅かという2者択一しかできない選択しの狭さ、区分所有権法の問題などがある。

2. 健康・医療情報

大量の健康・医療情報(クリニカルデータ)を統合し、活用することができれば、医療の質の向上、新たな治療方法や薬の早期開発・普及、予防・健康サービスの開発に大きく貢献するものと考えられる。一方、現状では、それが、医療機関内部などに死蔵されている状況にある。 どのようにすれば高度活用できるかについて、個人情報保護、医療に関する個人番号制度の導入なども含め議論を行う。

3. 体制・運営方法・事務局

研究会メンバー(アイウエオ順)

委員長 森田 朗 東京大学教授(政策ビジョン研究センター長)

東京大学からの参加
秋山 昌範  東京大学教授(政策ビジョン研究センター)
大江 和彦  東京大学教授(医学系研究科、医療情報経済学)
大西 隆   東京大学教授(先端科学技術研究センター、都市環境システム)
坂田 一郎  東京大学教授(政策ビジョン研究センター)
辻 哲夫   東京大学教授(高齢社会総合研究機構)
増田 寛也  東京大学公共政策大学院客員教授ほか

COCNからの参加
NEC、鹿島建設、トヨタ自動車、日立製作所、富士通ほか

4. スケジュール

第1期:2009年8月〜2009年12月

毎月1回の頻度で研究会を開催。東京大学・COCN双方からプレゼンテーションを行い、双方向のディスカッションを踏まえて、検討の方向づけを行い、中間とりまとめを行う。

第2期:2010年1月〜2010年12月

第1期の方向付けに沿ってピックアップされた提案のうち、重要な課題についてより具体的で深度ある提案を行えるよう、検討を続ける。

5. 開催報告