リスクカフェ
第1回 地震・津波リスク 専門家フォーラム報告
原子力発電所はどのような地震にどのように備えているか?
日時:平成25年11月23日(土) 13時〜17時
場所:東京大学農学部キャンパス 弥生講堂アネックス セイホクギャラリー
話題提供① システム安全の考え方と耐震設計について
多くの設備や機器で構成される原子力発電所の耐震設計では、システムを構成する様々な技術分野をどう統合するか、様々な技術に関わるそれぞれの人や仕事をいかにうまくつなげていくかが重要。しかし、システム全体の評価はこれからの技術。ただし、ほとんどの設備や機器を振動台で実験して、耐震性を確認してきた。設計は造るだけでなく運用や保守まで考えることが必要。想定を超えた事態への対応を現実問題として対処しようとしなかったことが福島第一原発の事故を拡大させた。
<Q&A>
原子力発電所にとって重要な地震現象、地震に対する余裕の考え方に関する確認のほか、原子力発電所の安全にかかわるシステムをどこまで考えるか、技術をつなぐための研究はなされているのか、について議論されました。
話題提供② 原子力発電所は地盤の変位にどう備えているのか
地盤の変位を解析する方法は限られており、広域の挙動は説明できても、発電所施設の正確な挙動を予測することは難しい。しかし、不確かさを合理的に考慮して施設の安全性を照査することは可能。非常に幅広いケースについて解析し、施設の最大傾斜を計算して、可能な工学的対応を検討する。安全側に考えるだけでなく、確率論的な評価を導入したり、想定を超えた場合の配慮をすることが重要で、これらを総合的に考えて施設の安全性を確認すべき。どこまでの安全を求めるかは社会とコミュニケーションする必要がある。
<Q&A>
解析の不確実性に関する質疑応答が行われました。
全体討議
以下の論点が話し合われました。
- 耐震設計の余裕とは:なぜ柏崎刈羽は想定を大きく上回る地震に耐えられたのか?
- 地盤の固さはどう影響するか? ⇒ 必ずしも固い地盤がよいわけではない? ⇒ 第2回へ
- Unknownはどこにどれだけあるか? ⇒ 地盤のことはほとんど分かっていない
- 専門家の見落としの可能性をどう考えればよいのか?
- どこまでのシステムを考えるべきか? ⇒ B,Cクラスの見落とし,防災や使用済燃料まで考慮すべき
- 地盤から設備はどうつながっているのか? ⇒ 実はつながっていない、つなぐ学問不在
- 地震をどこまで理解しているのか ⇒ 第3回へ
- 福島事故の問題は何か ⇒ 対策は知られていたが、想定を超える事態に備えていなかった