センター長 あいさつ
2010年8月10日
政策ビジョン研究センターは、東京大学が有する知的リソースを統合し、政策研究を行い、その成果を社会に発信していくことを使命として、2008年7月に創設されました。総合大学である東京大学の利点を活かし、社会の多様な関係者の課題意識を踏まえて、関連する科学技術研究や人文社会科学研究の最先端研究を突き合わせ、充分なデータと論理に基づいた、課題の分析と解決のための政策の選択肢を提示すること、そしてそれらの研究成果を政策に関心をもつ一般の方々が理解でき、現実の社会の改善に結びつくような形に加工し、発信することが当センターのミッションです。
最近では政策形成プロセスの透明化が進み、従来人々の目に触れることのなかった、政策決定プロセスの有り様が開示されることになり注目を集めましたが、同時に実質的な政策判断の基準や根拠に対する疑問を、世に投げかける結果ともなりました。エビデンスに基づいた政策の立案、および政策の優先順位を規定する論拠が求められる中、充分なデータと論理に基づいて多面的観点から行われる政策議論へのニーズは、ますます高まっているといえます。
また、そうした議論をわかりやすい形で伝えるインタープリターの役割も重要です。多様な情報を構造化して提示することによって問題点を明確化し、政策・制度や技術社会システムの多様な便益やリスクをバランスよく評価して、社会意思決定にフィードバックするメカニズムが、今まさに求められていると思います。
Policy Alternatives(政策の選択肢)を研究するセンターとして、今後とも多様な研究の現場と社会をつなぐ橋渡しとなり、研究者間はもちろん、民間企業、メディアやNPOといった様々な民間機関の方々とも連携しながら、新しい政策の選択肢を提示できるよう努めてまいりたいと思います。
現在、当センターでは、高齢社会、医療情報、医療機器、知的財産権とイノベーション、技術ガバナンス、航空政策といったテーマ毎に研究ユニットが発足し、それぞれの課題に応じた研究会やシンポジウムを通して研究成果の発信をしています。今後、ホームページやニュースレターをはじめ、様々な媒体を使って政策の研究・提言活動を展開していくつもりです。学内において社会への政策発信の必要性を感じれておられる方や、学外から東京大学のこのような活動に関心を持たれている方のご支援・ご協力を期待しております。