センター長 あいさつ

東京大学政策ビジョン研究センター センター長
坂田一郎

2016/6/24

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写真撮影:山下加代

20世紀は、自然科学のあらゆる分野で飛躍的な発展が見られ、技術が多方面に展開した時代となりました。そして、これらの科学と技術の革新によって、人類の活動範囲は桁違いに拡大し、社会は姿を変え、そして、人類はかつてない大きな力を得ることとなりました。

一方で、現代社会を支える基本的な仕組みの限界も露わになってきています。地球環境の劣化、資源の枯渇、社会の分断といった地球規模の課題はより顕在化し、また、世界情勢はより不安定になっているようにも感じます。より大きな力を得た人類がどのようにして、安定で平穏な社会を構築するのか、その道筋は明らかにはなっていません。多様な人々が尊重しあいながら協力して経済を駆動する新たな仕組みを生みだすことが求められる時代に入ったと考えられます。この新しい仕組みを駆動するものは人々の知恵に他なりません。すなわち、知恵が経済を動かす社会です。そこに移行できるのかどうか、人類社会は今、分岐点に立たされています。日本には、アジアの先進国として、それを先導する歴史的責務があり、未来に向けて世界のさまざまな人々を惹きつけ、知の探究を知の活用へとつなげる「知の協創の世界拠点」となることを掲げた東京大学は、それに関して中心的な役割を担う立場にあると考えています。

政策ビジョン研究センターは、現実の社会における課題解決のための政策の選択肢を提言・発信していくことを目的として、2008年に設立された組織です。先のような責務を担う東京大学の中にあって、現在、特に、限界が見えた現代社会の仕組みに代わる次世代の仕組みを構想し、それを世界に向かって発信していくことが求められています。こうした期待に応えるため、総合大学としての東京大学の利点を活かして、単一分野の学理だけでなく、多分野における研究成果を結び付け、課題解決に必要なエビデンスを生み出すための分野横断的な研究を進めるとともに、分野や組織を超えた交流のための「場」の形成を行っています。

より具体的には、主要な5つの研究部門において、ナノテク、ナノバイオ、サステイナブル・エネルギー、ジオエンジニアリング、薬理学、人工知能、イノベーション学、知財マネジメント、複合リスク、国際金融、国際政治、行政学、科学技術政策、文化・芸術などの領域の研究者が、分野を超えて混じり合い、我々が研究ユニットと呼ぶ研究チームを構成して、国際的な学術コミュニティや社会と連携をしつつ、解決すべき課題の探索や課題に対応した学際的な研究を進めています。また、センターは、同時に、研究フィールドの提供を通じて、「社会構想マネジメントを先導するグローバルリーダー養成プログラム(GSDM)」を初めとする、高度の専門性と世界的な視野や行動力とを兼ね備え、知の協創を主導する「知のプロフェッショナル」の育成にも貢献をしています。

このようなセンターの活動への一層のご協力、ご支援をお願い致します。


センター長あいさつ