政策関連用語集

医療におけるIT政策研究ユニット関連

クリニカルデータ(Clinical Data)
患者に対する治療経験により蓄積される、カルテや臨床検査、画像検査などを含んだ診療情報を指す。従来のクリニカルデータは、医療従事者の個人的な経験として利用されるのみであったが、電子カルテの普及に伴い、文字情報としての診療記録のみならず検査や画像データも含めてクリニカルデータのデータベース化が可能になる。知の構造化の手法を用い、情報を統合、解析処理することで、診断や治療はもとより、診断のエビデンス構築や創薬、医療機器の開発、医療人材の教育、医療の効率化、安全性の向上などに結びつけることが可能である。
オントロジー(Ontology)
情報工学の用語であり、概念間の関係性を定義する知識ベースとして定義されている。医療情報の分野においても、オントロジーは重要であり、オントロジーによって概念の構造化を行うことで、診療記録のテキストマイニングを行ったり、結果の集計などの2次利用が効果的に可能になる。また、情報入力の際にも、オントロジーが辞書の役目を果たし、効果的な入力支援を行うことが出来る。
活動基準原価計算(Activity Based Costing:ABC)
実際の活動量に基づいて間接経費を割り振ることで、より正確な原価の計算を試みる手法である。医療においても活動基準原価計算の試みは為されてきたが、活動量の測定が困難であり、敬遠されてきた。医療情報システムを用い、発生源での情報入力を行うことで、正確な活動量の測定と原価の計算が可能になると考えられる。質の評価と合わせることで、医療政策・経営への広汎な応用が可能になる。
データマイニング(Data Mining)
大規模データに対して統計学・情報工学の技法を網羅的に適用することで、知識を発見する手法である。これまでの統計解析は、何らかの仮説を証明するために、サンプルデータを収集し、仮説を検証するという形式であったが、データマイニングにおいては大量データをコンピュータを用いて直接解析することで、データを様々な階層に分類したり、想定外の関係性を発見することなどが可能になる。ハードディスクなどの記録媒体の低廉化により、大規模データの収集が容易になっており、それらのデータの解析手法として重要になっている。
クラウドコンピューティング(Cloud Computing)
ネットワーク、特にインターネットをベースとしたコンピュータの利用形態で、ユーザーは、コンピュータ処理をネットワーク経由でサービスとして利用する。PCなどの情報端末とネットワーク環境があれば利用可能なため、導入費用が低く、メンテナンス・データ管理が不要であるという利点がある。医療分野においても、セキュリティを担保するネットワーク技術を用いることで活用が可能であり、電子カルテや遠隔診断、患者宅の在宅システムなどへの応用が期待されている。
トレーサビリティ(Traceability)
物品の流通経路を生産段階から最終消費段階まで追跡が可能な状態をいう。製造業や食など様々な分野において注目されているが、安全生が生命に直結する医療においては特に重要である。薬剤や血液製剤、医療機器などのトレーサビリティをバーコードや電子タグなどの電子的なデータの捕捉手段によって確保することで、事故が起きた際に2次被害の拡大を防ぐことが可能になる。トレーサビリティの確保は、その他にも流通経路の透明化や物流の効率化など様々な効果が期待できる。
診療情報の2次利用
患者の診療によって得られたデータを診療以外の目的で使用することを指す。集められた診療情報を集積し、利用することで、診断のエビデンス構築や創薬、医療機器の開発、医療人材の教育、医療の効率化、安全性の向上などに有効だと考えられているが、2次利用の同意を得ていないデータに関しては、プライバシーとの関係性が問題となる。プライバシーを保護するため、個人特定を出来ないようにする匿名化技術やデジタルフォレンジック(別掲)技術による保護と適切な制度設計が望まれている。
デジタルフォレンジック(Digital Forensic)
コンピュータやネットワークを利用した何らかの犯罪や事件が起きた場合に、その原因究明や捜査などのために必要な証拠を収集・保存する技術である。この技術を用いることで、デジタル情報の正確性・真正性が担保され、信頼性の向上に繋がると考えられる。医療安全の側面においては、医療訴訟への対応と共にデータの正確性の担保による医療安全の向上効果が望まれ、診療情報の2次利用を進展させる上でも重要な技術の一つである。
医療事故情報・ヒヤリハット情報(Accident/Incident Information)
医療事故情報は、医療事故が発生した際の状況や事故内容に関する情報である。ヒヤリハット情報は、結果としては事故にはならなかったが何らかのミスを犯した事例の発生状況・内容に関する情報である。これらの情報は、事故やミスの再発防止・予防のために、非常に有益な情報であるが、医療従事者にとってこれらの情報を提供することは、時に不利益を被る可能性がある。こういった不利益をなくすために、第三者機関である、財団法人日本医療機能評価機構が情報収集に当たっている。
DPC包括支払い
DPC(Diagnosis Procedure Combination;診断群分類)に基づいて医療行為を分類し、それに基づき定額の入院費を支払うことである。DPC(診断群分類)とは、患者ごとに傷病名や年齢、意識障害レベル(JCS)、手術、処置の有無などの治療行為を組み合わせたものである。これまでは、入院医療費は行われた医療行為に基づいた出来高払いであったが、DPC包括支払いにおいては、同じDPC分類に当てはまる入院への支払いは一律である。
医療情報の標準化
医療情報を交換、共有、処理するために、データコンテンツの用語や構造の標準化、交換形式の標準化を行うことである。医療機関内では、様々な検査機器や電子カルテ間でデータの交換・処理が必要であり、相互運用性の担保が重要である。また、医療機関の連携が連携する際や情報を匿名化し、臨床試験などの2次利用に用いる際にも、標準化は必須の作業となっている。国際的な機関としては、ISO/TC215が対応している。
ISO/TC215
ISO(International Standard Organization)は、電気分野以外のあらゆる分野の標準化を推進する非政府国際組織である。ISO/TC215においては、医療情報における標準化をターゲットとする分科会である。独立なシステム間の相互運用性を担保し、統計的な集計・分類・解析等を効果的に可能にするために、医療情報の記録方法と医療情報通信技術の標準化を図っている。

50音で検索

                  

各研究ユニットの関連用語

知的財産権とイノベーション研究ユニット 医療におけるIT政策研究ユニット
安全保障研究ユニット 医療機器の開発に関する政策研究ユニット
技術ガバナンス研究ユニット 航空政策研究ユニット
生命・医療倫理政策研究ユニット 市民後見研究ユニット
再生医療政策研究ユニット 政策ビジョン研究センターオリジナル用語