政策関連用語集
政策ビジョン研究センター オリジナル用語
- 第2の死の谷
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21世紀に入り知識創造のスピードはどんどん早まっている。例えば、太陽電池の例では、学術知識の創出量は、現在は80年代の10倍以上となっている。こうした学術知識の爆発に後押しされて、これまで社会が想定してこなかったような新技術・手法が次々と生まれている。例えば、再生医療、在宅検診が可能なナノ医療デバイス、カーボンナノチューブ、生活支援ロボット、高効率の太陽光発電システム、進化する教科書等である。一方、国の制度の変化(制度には、モノや技術の技術基準、安全基準、標準、計測方法、安全性や効果に関する認証の仕組み、交通規則、社会的価値の高い技術の導入支援制度等のハード・ソフトローの双方を含む)のスピードは従来と比較して大きく変わっておらず、技術進歩のスピードと比較して緩慢である。
そのため、技術進歩と制度との間に「谷」ができ、制度の空白の中に置き去りにされる新技術が多数生まれている。新技術には何らかの不確実性やリスクが伴うのが普通である。このため、不確実性や危険性を適切に評価し、社会的なベネフィットを比較して採否を判断したり、それらを社会的に管理する制度がないと、新技術の市場化/社会的受容は困難である。
主に金融的な事情により、ベンチャー企業が持つ新技術の市場化が阻まれることは「死の谷」と呼ばれている。政策ビジョン研究センターの坂田教授は、先に述べたような制度的な要因により新技術の市場化が阻まれることを「第2の死の谷」と名付けている。
- 高齢者標準社会
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我が国では、社会の高齢化がかつてないスピードで進展をしています。高齢化率は、20年後には30%、35年後には40%を超えると予測されています。一方、医療の高度化等に伴って、高齢者の中の健康人口も増加しており、社会において大きな位置づけを占めるに至っています。ただ、概ね健康な状態にあるとは言っても、加齢に伴う身体能力や認知能力の若干の低下は避けられません。
以上のようなことを考えると、経済活力を維持し、また、国民の幸福実感を高めていくためには、社会全体を、高齢者の低下した身体、認知能力の水準に対応した、またはそれを補う措置を盛り込んだ構造へと総合的に変革していく必要があります。低下した身体、認知機能の水準を社会の「標準」とみて、それよりも高い水準を要求している社会インフラの見直しを行う必要があるのです。変革の対象としては、住宅・街づくり、交通、コミュニケ—ションのインタフェース、地域社会活動、後見制度等、多岐に渡る領域があると考えています。また、このような社会構造の実現には、我が国が育み、蓄積してきた新技術やアイデアの出番が多くあるはずです。
政策ビジョン研究センターでは、そのような構造を持つ社会を「高齢者標準社会」と名付けました。
- シルバーニューディール
- 高齢化社会の潜在的な需要と我が国が持つ新技術・アイデア、地域資源等の供給サイドの力とを結びつけることで、新たな産業・雇用の創造と、社会の高齢化に伴う課題解決とを同時に実現することを指す。東京大学政策ビジュン研究センターによる造語。潜在的な需要としては、マイホーム/マイタウンで安心して活動的に暮らす(都市・住宅関係)、ストレスを感じずに安全に移動する(交通関係)、社会とつながり続ける(情報、地域社会関係)、効果的な予防措置や治療を受ける(医療関係、医療IT関係等)等が想定される。また、こうした需要としては、国内だけでなく、欧州等の高齢化先進国や今後我が国に遅れて高齢化社会を迎えるアジア諸国をも想定をしている。新技術の典型的な例としては、オンデマンドバス、パーソナルモビリティ、見守りコミュニティシステムがある。
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