【新NEDO社会連携講座(知的資産経営研究講座) | Intellectual Asset-Based Management Research and Education Program】企業の保有する特許や技術ノウハウなどの知的資産が、その企業の競争力や収益につながるためには、競争力の源泉であるクローズ領域と、技術のブローバルな普及のためのオープン領域を適切に切り分けたしっかりした企業戦略が必要です。本講座の活動は、これらの企業の知的資産マネジメントの具体的実践についての研究、及び、新興国等における知財・標準・イノベーションに関する研究を行い、その成果を、東京大学における教育に生かしていくことと同時に、公開講座等を通じて広く社会への普及を図っていくことを目的として行われています。

リレーコラム 各国知財政策の展望

このリレーコラムでは、日本、米国、欧州、中国等、様々な地域に滞在している政策ビジョン研究センター 知的財産分野の研究者が、滞在国の知財政策に関係する話題を採り上げて解説します。


プロパテントの多義化によるイノベーション戦略

東京大学政策ビジョン研究センター 教授 渡部 俊也 2013/7/22

技術経営の大学院専攻で知的財産マネジメントの講義を2006年から担当している。毎回ケースを読んだうえでグループ討論に臨むというような授業で、それなりに負荷も大きいため、受講者は毎年15人から20人といったところだが、昨年から少し増え始めて今年は受講者が30人を超えた。工学系以外に理学系研究科の大学院学生も多い。質疑を聞いていても、例年より知的財産に対する関心が高くなっているように思える。学生に聞いてみると、関心を持ったきっかけの一つは、アップル対サムスンなどのスマートフォンの知財訴訟であることが多い。 全文を読む


トロール問題からみたアメリカの特許制度をとりまく現状

米国連邦巡回区連邦控訴裁判所 客員研究員、政策ビジョン研究センター客員研究員 古谷真帆 2013/8/20

英和辞典によると、トロールは、北欧神話にでてくる巨人、或いは何かを釣るという動作を意味している。ネットスラングとしても使用されており、その場合は、インターネット上で他人に議論を投げかけたり、困らせたりする投稿をおこなう人を指している。知財業界においては、2001年にインテルのPeter Detkinがパテントトロールという表現をしたことがトロールという言葉が用いられるようになった始まりであると一般的に考えられている。本用語は学術用語ではなく、明確な定義がないという点が大きな問題と言える。「トロール」と単体で用いられることもあるが、知的財産を表す名詞と結合した、「コピーライトトロール」1、「トレードマークトロール」、「パテントトロール」といった用語も存在する。 全文を読む


米国のMyriad最高裁判決

ニューヨーク州弁護士、政策ビジョン研究センター客員研究員 小野奈穂子 2013/9/11

女優アンジェリーナ・ジョリーが遺伝子検査を受け、87%の乳がんリスクと50%の卵巣がんリスクと診断され、予防的乳房切除を受けて前者のリスクを5%まで下げたことを綴った記事をニューヨーク・タイムズに自ら投稿したことは日本でも話題になったと思う。皮肉なことに、その遺伝子検査等が高額すぎて払えないという患者その他が、関連する多数の特許を有するバイオベンチャーMyriad社に対して特許無効を訴えて最高裁まで争っており、最高裁が一部特許無効とする判断を下したのはアンジェリーナ・ジョリーの記事の直後であった。 全文を読む


FRANDをめぐる特許訴訟の動向

弁護士、英国事務弁護士、政策ビジョン研究センター 客員研究員 南かおり 2013/9/13

欧州からお届けする話題は、標準必須特許に関する特許訴訟で争点の一つとなるFRAND(Fair, Reasonable, and Non-discriminatory の頭文字をとったもの。「公平、合理的、かつ非差別的」の意味)をめぐる訴訟の動向である。FRANDに関しては、欧州でこの1,2年で重要な裁判が続いたほか、米国で近時注目判決が出され、日本でも初の判決が先日出されたところである。 全文を読む


中国の特許制度とその実態

政策ビジョン研究センター 客員研究員 李 龍 2013/10/9

中国の国内外において、企業の技術開発力や国際化を示す指標である特許出願件数が急増して注目されている。特に2009年以降、特許出願数が目立って増加しているが、実際に出願に従事する企業も増え、権利取得件数も増加している。出願件数が増加した原因は政府の出願支援施策の影響が大きいが、同時に知的財産を重視する企業が増え始めたことをも意味している。 全文を読む


日本から新興国への発明者移動

知的財産研究所研究員 藤原 綾乃 2013/10/10

近年、先進国では少子高齢化が急速に進み内需の拡大が見込みにくい中、高成長を続けてきた新興国市場への注目が集まって久しい。もっとも、2011年に中国の成長率が鈍化して以降、インドやブラジルなどでもGDP実質成長率が鈍化傾向にあることから、新興国の経済成長に疑問を呈する声があることも事実である。しかし、中長期的に見れば、生産年齢人口が増加傾向にある新興国が、先進国に代わって世界経済を牽引するという構図は今後も続くものと思われる。 全文を読む


ライセンス契約の研究 クアルコム社韓国独占禁止法事件紹介

政策ビジョン研究センター 客員研究員 二又 俊文 2013/11/21

スマートフォンを牽引車にICT業界の活況は続き、アップルとサムスンの2強の戦いは一段と激しさを増している。しかし、このICT業界での業績が、2社以上に絶好調といわれているクアルコムのことをご存知だろうか。クアルコムはアップル、サムスンとは異なり、携帯端末を手がけていないため一般にはそれほど知られておらず地味だが、両社の製品にもクアルコムのICチップや、技術ライセンスが組込まれ、クアルコムの影響力はますます強まっている。 全文を読む