『大震災に学ぶ社会科学 第3巻 福島原発事故と複合リスク・ガバナンス』 2015年9月25日発売

  • 東日本大震災学術調査『大震災に学ぶ社会科学』全8巻シリーズ刊行
日本学術振興会は2012年4月、「東日本大震災学術調査委員会」(委員長:石井紫郎・東京大学名誉教授)を起ち上げ、広く社会科学諸分野にわたって90人をこえる研究者の参加を得て、8班からなる「学術調査実施委員会」を設置しました。東京大学政策ビジョン研究センターの複合リスク・ガバナンス研究ユニットのメンバーが参加した「科学技術と政治・行政」班が3年間の調査結果を取りまとめ、この度「大震災に学ぶ社会科学第3巻 福島原発事故と複合リスク・ガバナンス」として刊行されました。
「現代の社会経済活動は広域そしてグローバルかつ重層的に相互連結し、様々な技術システムに支えられるとともに、それらに強く依存し、複雑化している。このような状況において、2011年3月11日東北地方太平洋沿岸地域を巨大地震と津波が襲った。想像を絶する自然の脅威は、大規模な社会インフラシステム(通信、鉄道、港湾、送配電網、水供給など)に甚大な被害を与えるとともに、福島第一原子力発電所の過酷事故を引き起こした。 福島原発事故は、地域住民の生活を奪うだけでなく、原子力発電所との社会的・経済的な依存性を様々に発露させ、東北・関東地域での電力供給不足による生産活動の停止・低下、さらにはサプライチェーンを通じた全国・国外への影響波及、全国の原子力発電所の稼働停止、国内及び他国での原子力・エネルギー政策の見直し議論、原子力安全規制要求事項の再吟味へと、連鎖を引き起こした。そして、事故後4年以上を経た現在も、福島第一原発の管理はなお予断を許さず、廃止措置という終息への長い道程に入っている。 東日本大震災や福島原発事故は、また、原子力発電、エネルギーの問題だけではなく、他の分野の問題へと波及した。福島原発事故は、食品中の放射性物質に関する安全問題に波及した。また、震災と福島原発事故は、患者の避難、医薬品・医療機器の被災地への供給という問題を引き起こし、医療・介護問題にも影響を及ぼした。震災は交通インフラへの影響も大きかった。さらに、震災に際しては、金融や実体経済活動にシステミックな影響が生じる恐れがあったため、被災者に対する金融面での適切な対応や被災地金融機関の決済機能が確保される措置がとられた。そして、これらの問題は相互に関連していた。 本書は、第1部において、総合工学の代表格である原子力発電技術の利用にあたっての社会的な安全確保活動を、リスク・ガバナンスという枠組みで捉え、福島原発事故の以前・事故時・以後の姿を、事例分析等を通して考察する。そのためのリスク・ガバナンスの分析枠組みを本章第1節では提示する。第2部においては、福島原発事故の食品安全問題への波及や、東日本大震災という緊急事態における医療システム、交通システム及び金融システムの対応について、各分野の事例を分析した上で、相互関係性及びそのような相互関係を管理する複合リスク・ガバナンスの課題について考察する。本章第2節では、そのような複合リスク・ガバナンスを分析する座視を提示する。」

(『第1章はじめに:リスク・ガバナンスの課題』谷口武俊・城山英明)

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第8回 レジリエンス政策研究会 開催概要

  • 議題:「東京都の防災対策」
  • 日時:2015年1月20日(火)18:00‐20:00
  • 会場:東京大学本郷キャンパス 伊藤国際学術研究センター3F特別会議室
  • 講師:前田 哲也 氏(東京都総務局総合防災部 計画調整担当課長)

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第6回 レジリエンス政策研究会 開催概要

  • 議題:「行政をめぐる近時の状況と今後のあり方について ~ 厳密なリスク管理型の行政からレジリエンス型の行政へ」
  • 日時:2014年9月16日 18:00 - 20:00
  • 会場:東京大学本郷キャンパス 伊藤国際学術研究センター3F特別会議室
  • 講師:中井亨氏(内閣官房行政改革推進本部事務局参事官)

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第5回 レジリエンス政策研究会 開催概要

  • 議題:「Building a Global Commons: Resilience in Managing Extreme Events」
  • 日時:2014年9月1日 9:30 - 12:00
  • 会場:東京大学本郷キャンパス 工学部3号館321教室
  • 講師:Dr. Louise K. Comfort(Professor of Public and International Affairs and Director, Center for Disaster Management, University of Pittsburgh)

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第4回 レジリエンス政策研究会 開催概要

  • 議題:「自衛隊の災害派遣と国民保護措置の実施について」
  • 日時:2014年7月15日 19:20 - 21:00
  • 会場:東京大学本郷キャンパス 伊藤国際学術研究センター3F 特別会議室
  • 講師:原田忠義氏  防衛省運用企画局事態対処課国民保護・災害対策室長

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第3回 レジリエンス政策研究会 開催概要

  • 議題:「地方自治体(県)における危機管理業務の課題」
  • 日時:2014年6月17日 18:00 -20:00
  • 会場:東京大学本郷キャンパス 伊藤国際学術研究センター3F 特別会議室
  • 講師:小川英雄氏  前静岡県危機管理監・静岡県住宅供給公社

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第2回 レジリエンス政策研究会 開催概要

  • 議題:「医療・公衆衛生領域の健康危機管理・災害対策について」
  • 日時:2014年5月20日 18:00〜20:00
  • 会場:東京大学本郷キャンパス 山上会館 会議室1
  • 講師:寺谷俊康氏 厚生労働省大臣官房厚生科学課 健康危機管理・災害対策室 室長補佐

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第1回 レジリエンス政策研究会 開催概要

  • 議題:「緊急事態における我が国の危機管理体制と危機管理の課題」
  • 日時:2014年4月22日 18:00〜20:00
  • 会場:東京大学本郷キャンパス 伊藤国際学術研究センター3F 特別会議室
  • 講師:伊藤哲朗氏 東京大学客員教授・元内閣危機管理監

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『AERA』2015年3月9日号掲載

本日発売の朝日新聞社『AERA』(3月9日号)「リスク社会を生きる」特集にて、第二回リスクランドスケープ調査における50項目のリスク要素、および岸本充生特任教授への取材が掲載されました。 リスクランドスケープ調査については研究テーマ紹介にて解説を掲載しております。 また、現在、リスク項目を34に絞って誰でもウェブ上で簡単に自分自身のナショナルリスク・ランドスケープを描いてみることができる作成ツールを用意しました。ぜひ参加して回答してみてください。(実施中のアンケートページはこちら)
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複合リスクのガバナンスに向けて(3)

  • 複合リスクのガバナンスに向けて(1)
  • 複合リスクのガバナンスに向けて(2)
  • 複合リスクのガバナンスに向けて(3)

ナショナルリスクを評価する

ナショナルリスクを俯瞰し、重要なリスク群を同定したら、それらのリスクを利用可能なデータや情報に基づいて、多面的にプロファイリングすることが次のステップである。現在、米国や英国を始めOECD加盟国を中心に15ヶ国で、オールハザードを対象としたナショナルリスクアセスメントが政府機関で実施されている。

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複合リスクのガバナンスに向けて(2)

  • 複合リスクのガバナンスに向けて(1)
  • 複合リスクのガバナンスに向けて(2)
  • 複合リスクのガバナンスに向けて(3)

日本のリスクを俯瞰する

今後10年程度(2025年まで)を展望したとき、日本のナショナルリスクとして考慮すべきリスクを洗い出し、これらのリスクの発生可能性と影響度、リスク間の相互関連性などについて、有識者の認識を可視化するため、平成26年3月の予備的調査を踏まえ、同年8月にWebアンケート調査(有効回答者数169名)を実施した。

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複合リスクのガバナンスに向けて(1)

  • 複合リスクのガバナンスに向けて(1)
  • 複合リスクのガバナンスに向けて(2)
  • 複合リスクのガバナンスに向けて(3)

我々の社会経済活動は、様々な技術システムに支えられながら、広域そしてグローバル且つ重層的に繋がり合っている。そして、我々は、地震、洪水、台風、津波、火山噴火、異常気象や人・獣感染症の広域流行といった自然起因のハザード、重要インフラ施設での重大事故や施設事故による放射性物質・有害化学物質・生物学的物質の放出・汚染といった技術起因のハザード、サイバー攻撃や重要施設・機能集積エリアへの物理的破壊攻撃といった人的行為起因のハザードなどに常に晒されている。そのため、ひとたびある分野で重大なリスクが顕在化すると、それは時間的、空間的な拡がりをもちリスクの連鎖を引き起こし、ひいては直接的、間接的に国家の成長や国民生活への深刻な障害となる可能性がある。

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