医療イノベーションのフロントランナーに聞く①
医療イノベーションのフロントランナーとしてご活躍中の3人の先生方にお話を伺いました。
インタビュー(2012年6月21日実施)
松本洋一郎 東京大学理事・副学長、内閣官房医療イノベーション推進室長
東京大学大学院工学系研究科 教授
林良造 東京大学公共政策大学院 客員教授
大西昭郎 東京大学公共政策大学院 客員教授
(聞き手)
佐藤智晶 東京大学政策ビジョン研究センター 特任助教
山野泰子 東京大学政策ビジョン研究センター 特任専門職員
書き起こし(全文)
山野: 松本先生はもともと医療機器の研究をされていたということですが、医療イノベーション推進室室長としてのお立場で6ヶ月経ち、どのように感じていらっしゃるのかお伺いしたいです。医療イノベーション推進室での活動に意義があると思われたポイントは。
松本: 結局ですね、僕はバックグラウンドが機械工学ですね。機械工学というのは最終的に人の役に立ってなんぼですから、まあ製品として作り出していくというのは本質的に意味があることだというふうに認識をしています。だから自分でこういう機械工学の中の技術を使ってこういう製品ができると思ってもですね、結局その製品が社会で使われて初めて活きるわけですよね。で、お医者さんと一緒に仕事をしてきて、でも最終的に医療機器の研究をやってましたけれども、それがお医者さんに使われて患者のためになってはじめて生きるわけですよね。で、今の医療イノベーション推進室の意味というのは、最終的に日本の医療をどうするかという話で全体が進んでるわけですけれども、そういう意味では単に医療機器、いい機器ができたからといって全部使われるわけでもないし、やっぱりその使う絵、使われる、使いやすい環境を全体で構築していかないと人類のためにならないんですね。だからそういう意味ではある種の設計という概念で言うと、最終的なところまで設計に参加できてるという意味では、まあ意味がある。
山野: 設計というのはかなり広い意味での、
松本: きわめて広い意味での
山野: 社会的なインフラ設計という意味ですかね。
松本: そうそう。やっぱりインフラとしてどう作りこんでいけるかというようなところじゃないかなあと思うんですね。で、医療イノベーションと言った時に、医療技術のイノベーションだけではなくて、医療というサービスのイノベーションをどうおこしていくかというのが極めて重要なポイントですよね。そういう意味では技術者冥利に尽きるのかもしれないという気はしますけども。でも楽しいのはやっぱり狭い研究を、そんななんかどっかの調整をしながらどうのこうのというんじゃなくて、そっちの方がそりゃ楽しいのは当たり前かもしれない。
山野: 拡大と縮小という意味で考えると、かつて研究してらっしゃったようなメソッドというか、そういうことも生かされるチャンスがあるということでしょうか。
松本: メソッドとしては、まあ機械工学はいろんな雑多なものを寄せ集めてきて最終的にものにするというそういうメソッドは使えるかもしれないですね。
山野: 最近佐藤先生のシンポジウムが医療イノベーションにおけるハーモナイゼーションというテーマで、よくキーワードでハーモナイゼーションという言葉を聞くんですけど、それだけ聞くとすごい夢がある感じに聞こえるんですけど、中身がちょっと素人にはわからないところがありまして、何をもってハーモナイズしようとしているんでしょうか。
松本: そうですね、あの、私自身もハーモナイゼーションと言った時の本当の意味というのは何なのか、それほど深く理解しているわけではないですけれども、完全にハーモナイゼーションと言った時に、じゃあ一つの基準でうまくいくのかというと実はそうでもなくてですね、その国医療のあり方なりレギュレーションのあり方というのは、やっぱりその国の文化とも深く関わっているし、どういう人が住んでいるのかによっても違うでしょうし、そういうそのある種の規制のあり方をうまくハーモナイズさせて全体最適をどうとっていくかという話になると思う。
山野: 全体というのは全世界規模での最適
松本: そうそう。全人類のハーモナイズをどうもっていくか。だからたとえば日本だけの規制のあり方で全部をコントロールするわけではないですよね。それからもうひとつは機械製品で言うとですね、ある種のスペックというのはそんなに広い話ではなくて、このスペックならこういう規格だとか基準がいいんですよっていう話はできて、で結局最終的にはISOっていう世界の規格になっていくんでしょうけども、医療というのはやっぱり社会の中で動いてて初めて生きてるわけですから、そこにあんまり堅い基準ていうのを同じスケールでぼんと当てはめるというのはまだちょっと難しいと思うんですね。
山野: 国ごとにいろんな違いがあるということですね。
松本: そう。それで、完全にホモジェナイズされた世界の中であれば、ひとつのスケールではかれるかもしれないけど、そうじゃないとするといろんなスケールがあって、その間をどううまく調整していけるか、というのが、結局ハーモナイゼーションということなのかなぁ、というのが私の理解ですけどね。
山野: 一方ではハーモナイゼーションということのメリットもあると思うんですけど、国家間だと競争関係にあったりするわけですよね。日本がより優位な位置を保つためには、という考え方もあると思うんですけど、ハーモナイゼーションと矛盾することはないですか?
松本: 結局でも、どちらにハーモナイズさせるかというところで言うと、やっぱり先に走っていて、より合理的な基準を持ってるほうが、まあハーモナイズはさせながらでも、それをいきなりやれって言っても、そっちはできないわけですよね。でもその時のうまい調整の仕方っていうのはあると思うんですね。国家間の競争というのはもちろんあるんですけれども、でもその、例えばものを作ってるという立場で言うと、何ていうかもう、メーカーという観点で言ってもいいし、アカデミアという観点で言ってもいいんですけども、それをもうグローバルな中で仕事をしてるわけですよね。そうすると、小さいコミュニティの中だけで作られた、そこに最適な基準だけを一生懸命頑張ってても仕方がないんだけども、でもさっきも研究の話をしましたけど、あるboundaryを決めてその中で深くやってると、それはその新しい発見もどんどんあるし、何か変な調整というよりは、毎日が新しい発見だから、そりゃ楽しいでしょうけど、で、コミュニティを小さくしていくと、そういう規格・基準のあり方のわりと合理的なものが出てくるかもしれない、でもそれをだんだん広げていくことによってハーモナイズさせていくわけですよね。だからそういう意味では、最初からハーモナイズしましょうね、っていうんじゃなくって、いろんなコンペティションをやって、初めてハーモナイズさせてコラボレーションが発生するんですね。そういう風に考えてくるとまあ、そんなにコンフリクトはないのかなという気はしますけどね。
山野: ステージがちょっと違うということですね。
松本: うん、ちょっと違う。でもまあ発展していく方向は、ハーモナイズさせて、さらに規格・基準を合理的なものに変えていくわけですね。狭い世界だけで作った規格なり基準なりが全部を支配するわけではないというのが重要な話ではないかと思うんですね。で、特に、人体を相手にしてるわけであって、これはもうものすごい複雑形ですよね。で、毎日どういう気持ちで生活してるのか、ぐらいまできいてきちゃうわけですね。で、そうすると、ストレスの多い社会に合った規格・基準のあり方とかね、もっと自由にわーっと生きてる社会の基準のあり方とか違うかもしれないから、そういう意味では文系の人も一緒に入ってきて研究しないといけない。
山野: 有難うございました。続けて林先生にお願いしたいです。林先生は当センターの中でも医療機器研究ユニットを担当してくださっているんですが、医療機器分野において今目指してらっしゃることを教えていただけますでしょうか。
林: 私もともとバックグランドは経済産業省にいまして、それでまああの当然産業、将来の日本を担う産業はなんだろうかというふうに考えているんですけれども、その時にその医療、医薬なり医療機器っていのは、これだけ豊かな高齢者がたくさんいて、健康志向を持っておられて、これだけ優秀なお医者さん、我々の時代はだいたい一番優秀な人はお医者さんになりましたから、それからそのエンジニア、日本を猛リード、世界をリードした日本のエンジニアがいて、それから産業という目から見ると、日本の製造業の品質管理とかですね、冠たるものがあると。これだけのことがありながら、日本からなかなかリーディングインダストリーとして出ていかないのは不思議だなあ、というところが実は一番初めそこから研究を始めまして、それでまあいろいろ研究会をやったりしていますと、まあ様々な問題があると、確かに。例えばベンチャーキャピタルが十分じゃないとか、あるいはそのベンチャービジネスのリーダーがたいへんIPOばっかり目指しているだとか、あるいはその経営者としてリスクをとらない者が多いとか、その人材として国際的になかなか活躍する人材を育てていないとか、様々な問題があるんですけれども、ずっと根底まで考えて詰めていくと、どうもその規制、様々な分野がありますけれども、安全規制なり保険という形での規制なり、あるいは病院の配置規制なり、そういうものが大変不透明で、ビジネスとして見当がつかない、と。それがすべての出発点にあるようだということがだんだんわかってきまして、そのころにちょうどテルモという会社の和地さんという方がおられまして、その和地会長が、医療機器にちょっと特化して考えてください、という話をされたもんですから、医療機器に特化して考え始めて、と同時に実は現場からの医療改革協議会という、これは政治のリーダーから、実業界から、あるいは学会から、あるいはそのお医者さんから、非常に幅広いメンバーが入ってるんですけれども、その中で、実はそういう規制の不透明性に伴う問題というのが様々なところで、単に医療機器だけでなくって、例えばその救急医療の問題だとか、あるいはその解剖医、といいますかその検視官の数が足らないとか、まあ様々なとこにいろんなことでずっとつながってきているということが一方で分かってきたと。そしてそのころにちょうどそのドラッグラグだとかデバイスギャップと呼ばれるような、実は産業の問題というよりも患者さん自身がたいへんこの日本の状態が遅れていることによって不利益を受けているということがだんだんわかってきたころから話がこうごそごそ動き始めたような気がしてます。一番大きなそういうことにつながっていった、そういう現象が起こった一番大きな理由というのは、先ほどのハーモナイゼーションの話に関係するんですけれども、グローバリゼーションが進んだ結果、その企業の生む製品だけじゃなくて、企業が動けば、お医者さんも動けば、患者さんも国境超えて動きます、と。そうすると一番いいところに、活動しやすいところに動いていく、と。で、活動しにくいところには別に、まあほっていかれてしまう、と。そうすると、せっかく日本の技術があるにもかかわらず、日本の患者さんがその恩恵を被れないと。というようなことが、そういう構造になってるということがわかってきて、そのころから随分その政府全体を挙げて動き出した、と。その時に、まあ政府の中では、各省一生懸命やってはいるんですけれども、どうしても自分の分野の考え方で縦割りになりますし、まあそういうところ、あるいはその、どうしても日本の行政の癖として、非常にミクロの分野の利害調整的な形でその、まあ結果をうまくやるために、不透明な形であってもおさめていくという、そういう文化があるもんですから、そういうところがまああの非常に大きな問題になってきたところで内閣が表に出てきて、そしてその各省の、各省言い分あるんだけれども、それを抑える形で全体像を書いて、そしてその全体像の中で安全規制の問題、あるいは保険の問題、あるいは病院配置の問題、お医者さんの数の問題、あるいは医療過誤の種類の問題、そういう全体像を書いて、各々のぶんぶんがちゃんとやりなさい、と。これは内閣しかできないんです。かつその内閣の中で、松本先生のような、ある意味で中立的な方がそこに指揮を執っていることによって、その各省がまあ動いていくと。まあそういう意味で、一方で10年前始めたところからくるとよく動いたなあと思う反面と、それにしても世界もっと早いスピードで動いてますから、そういう意味で言うと、まだまだだなあという意味で、内閣がリードしてきてここまできたということで、お陰様で医療機器についてはその様々な規制の問題とかそういうものが大変はっきりしてきて、それをきちっとやっていこうということまでやっていただいた、と。次は、再生医療だとか個別化医療とか、次に見えてきてまして、それらの問題も同じように考えて早く考えていかないと世界もっと早く動きますから、そういった意味で、ハーモナイゼーションというのはどうしてもやはり人の安全に関わりますから、おのおの微妙に違うところがあるなかで、一方で世界に限られた医療資源をより多くの人が裨益するようにより早くより安全に提供していくと。そういう合理的な考え方で整理をしていこうと。そうなった段階で初めて世界で調和する、ハーモナイズするということが可能になるんですね。そういった意味で、ここまでやっていただいて、次のステージは、次に見えている課題について、日本が早く動くことによって、そういう場合日本が早く動いてそういう費用なりお医者さんなり患者さんなりにとって親和的な環境を日本の中でできれば、皆さんそこに来ますから、そこでその医療活動・産業活動がまた日を浴びる。そこに入っていければいいなというふうに感じています。
山野: 医療機器の次に再生医療が見えてきたと仰ったんですけど、再生医療からやるという可能性はなかったわけですか。
林: もちろんその再生医療からとかいろんな考えがあったと思いますが、医療機器をやることによってはじめて、問題点が、こういう層を、何層もの問題があって、一番そこに規制の、根源的な規制の問題、規制のその申請の問題、あるいは妙な画一性とか、あるいは縦割り性とか、そういう問題があるということがわかったことによって、実は次の問題が初めてできるようになったと。そういった意味で言うと、非常に具体的なもう世界でmatureになっている、世界はもっと先にいっているということがあって、それを現に見ることによって、あ、こんなことになってたんだ、と。それは、正面から取り組まなきゃいかんよな、ということになり、当然、そうするとまさにその同じ延長、同じ問題が実は再生医療なり、個別化医療なり、にも待ち受けていると。だからこれで大変いいところを、ここまでやっていただいたんで、これができてはじめて、ある意味でワンユニットができた、と。これが様々なところに適用できると、そういう意味で、まあ、いろんな考え方あったかもしれませんけれど、僕自身は医療機器でそこまで出てきたということをいいと思ってます。
松本: 再生医療と医療機器だと技術的に先を走ってたのは機器の方ですよね。再生医療はこれからまだまだ発展する分野だから、そういう意味じゃ機器が先なんだと思いますけどね。
山野: わかりました。では大西先生、産業界からの視点ということで、医療イノベーションを推進する上で大事なポイント、視点を教えていただけますか。
大西: えーそうですね、私のバックグラウンドは産業界の立場で、医療機器のメーカーという立場からこれまでのような活動に関わってきたんですけども、やはりその、先ほども両先生が仰られたように、医療の分野というのは、自然科学と社会科学の接点のようなところだと思うんですね。その医療イノベーションとはまさしく自然科学といいますか科学技術が発達することによって、新しい治療法ですとかまたはいろんな機器、または薬剤、またはいろんな手法が開発されるという、それを今度実際に医療現場にあてはめていくというのは、社会的なコンセンサスを作りながらやっていかないと、これは実現できない。さらにはコンセンサスの中には企業というのは制度というものが非常に重い仕組みとしてできあがってますから、それにどうあてはめていくのか、またそれをどう調整していくかということがこれが両輪としてあるかなと。とりわけ産業界の中にいるとですね、非常にこう生々しくそれを感じる立場にいることができたというのもありますし、もうひとつはその、産業界というのは国境がありませんから、世界中のマーケットで、その制度の中で、そのある技術をいかに普及させていくかということを考えていくわけですね。そういう立場から見ていくとですね、各国のちがいも見えてきますし、それから制度というものが、産業もしくは経済活動にどういうふうに影響するのかまたは現場の社会にいらっしゃる患者さんたちの状況にどう影響していくのかということに、すごくこう接することができたということで、それをうまく研究の場に生かしていければなという風に思いますね。
佐藤: 研究者の立場として、産業界の立場から今大変な研究を始められていますけど、どんな点に関心をお持ちになりますか?
大西: そうですね、やはりその医療イノベーションという言葉は非常に意味の深い言葉じゃないかというふうに思うんですけども、イノベーションというのは今までどちらかというと、松本先生が言うように自然科学の分野のお話を中心に言ってたと思うんですが、やはり社会の制度とか、自然科学と社会科学のインタラクションにどういう風なことが起きるのか、そちらのイノベーションをどういう風に作っていくのかというところに非常に興味がありまして、そういう意味では、いま話題になっております医療機器の中で見えてきた医療機器のイノベーションが、医療制度の社会の仕組みにどういう影響を与えてきたか、または与えつつあるのかということを、さらに敷衍してですね、もう少し幅の広い別の分野のイノベーション技術というものが今後どういう風にまたは影響していくのかということをですね、少しでも見ることができたらいいかなという風に思ってます。
山野: 研究対象としては、結構取扱いにくいような感じもしますけど、それを進めていかれようとするというのはやっぱりニーズを感じられるからですか?
大西: ひとつ大きなテーマとしてあるなと思うのは、いま世の中の自然科学の分野、もしくは社会科学の分野、もしくは各国のいろんなその市場で起きてる、企業の分野という意味でのフロントラインのことをですね、たくさんの方に知っていただくということは非常に重要なのかなという風に思います。もともとどこで何が起きているかということから、多くのことが発生してくるということですね、ところが、林先生も言われましたが、これまで少し透明でなかった部分、もしくは少し情報として見えにくかった部分というのが、医療の分野は特に多いのかなというふうに思いますので、そういうものを少しでも見つけて、皆さんに知っていただくと、または皆さんに興味を持っていただくということができれば、そういうものに役に立つのかなというふうに思いますね。
林: 技術という面でも、制度という面でも、いまものすごく多くのデータが利用可能になってきていて、そのデータを解析することによって、世界で同じ共通の考え方と基盤でいろんなことが技術についても制度についても考えられると。そういった意味で、今松本先生と大西先生とやっていただいた結果、そういうフロンティアが日本でもやっと広がりつつあると。これで、そもそも世界はもっと早く進んでいますから、ここからやや本物の競争ができるようになったということじゃないでしょうか。
山野: 日本の得意分野というかプライオリティを維持できる可能性がある余地はありますか。
林: それはやっぱりどう考えてもこれだけ豊かな高齢者がほんとに健康志向があるわけですよ。マーケットがあって。そしてそのサプライサイドを見てみてもこれだけ優秀なお医者さんが山ほどおられて、それでかつその製造業という観点からみると技術開発能力にしても、あるいは品質管理能力にしても、やはり世界でも冠たるものですから。これだけ揃っていて、本来勝てないはずがない。他の様々なものを比べると、これほど恵まれた、ひとつの需要があって供給があって、それがそのぶつかって競争することによって進めたわけなんですけれども、これだけ恵まれた環境っていうのはなかなかあるわけじゃないんで。そういった意味ではそのまあ医薬もそうかもしれませんけれども、医療機器っていうのは特にその日本の場合には機械工業とかですね、そういう意味で各々の技術と産業というものをしっかり持っていられるので、まさにこれで成功できなければ、日本で他のこととても成功できないんではないいかという気はしますね。
松本: 一つはやるディシジョンをするか、ということなんですよね。医療機器について言えば、医療機器を開発してるメーカーがちゃんとその技術者を投入してね、そういうスペックのものっていうものを作るかどうかですよね。それは、できる。もう設計はできてるんですよね。製造をするかどうかっていうディシジョンが大きいかもしれない。
佐藤: あとは作りたい、使いたいっていう気持ちを。
松本: 使いたいはあると思うけど(笑)
佐藤: 増幅させるような何かを生み出せるかですね。
松本: まあだから今の日本の中だと、作って使ってもらって、ひょっとして、機械ですからね、何かあるかもしれないし、医療だって、患者さんの全体がパーフェクトにわかってこうある措置をするわけじゃないですよね。そうした時にその責任の取り方がね、どうなのか、っていう、なかなか複雑な問題はありますよね。
林: ある意味不幸なことに、安全か危険かっていうふうに二分されてしまうと、ものすごく不毛な議論になっていくんで、実はその、遅れることによってマイナスもあるし、あるいは一緒にすることによってマイナスもあるし、これを、どこを、遅れすぎないように、かつその粗雑にならないように、丁寧にやっていくっていう、そんなある意味でものすごく合理的な、エンジニアリング的な手法ができるとこなんですよね。それをその、ものすごいシンプルに、安全か危険かとかいうことで、少し厄介な問題が出たから、じゃあもう一切やめましょう、とまあそういうふうに出ないで、
山野: 振れ幅がちょっと大きい状態なんですね。
林: そうですね。だからそれをきちっとその合理的に判断をしていくっていう、そういうプロセスが今スタートしている状態じゃないですかね。
松本: それは、レギュラトリーサイエンスの部門でしょうけどね。広い意味での。
山野: 長い時間有難うございました。
関連サイト
第1回医療イノベーションワークショップの議事報告・講演資料(2012年4月13日実施)
コラム: 規制のハーモナイゼーションを通じた医療イノベーションの可能性
(政策ビジョン研究センター 特任助教 佐藤 智晶)